(読み)はり

精選版 日本国語大辞典 「張」の意味・読み・例文・類語

はり【張】

[1] 〘名〙 (動詞「はる(張)」の連用形の名詞化)
① たるみなく、のびたり、ふくらんだり、開いたりすること。また、その具合。
※浮世草子・好色五人女(1686)三「目のはりりんとして」
博打(ばくち)で、物や金銭などを賭(か)けること。また、その賭け具合。
※黄表紙・莫切自根金生木(1785)中「因果とはりがかたっつりになって、あき目へあき目へと出でければ」
③ 引いたり、踏みこたえたりする力。「張りの強い弓」
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「弓と曲げても張の弱い腰に無残や空辨当を振垂(ぶらさ)げて」
肉付き、声、気持などが引き締まっていること。
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉七「気象は張(ハリ)がなくって、少しグウタラの方のやうだが」
※われら戦友たち(1973)〈柴田翔〉一「部屋の中から『どうぞ!』と、はりのある若い声が返ってきた」
⑤ 特に、義太夫謡曲などで上音(じょうおん)にうたう節。
※申楽談儀(1430)犬王「『をぐるまの』、『まの』をはりにていふて」
⑥ 物事を行なおうとする意欲。物事をするかい。張合い。
白鳥の歌(1948)〈内村直也〉「生きて行くはりとでもいふ奴なんだらう」
⑦ 自分の意志や意見をどこまでも通そうとする強い精神。意地。いきじ。いきはり。
※評判記・難波物語(1655)「はり少くて、いきも足らず」
⑧ 色恋の相手としてつけねらうこと。
滑稽本浮世床(1813‐23)二「最うよもや張(ハリ)にはあるけめへ」
⑨ 「はりて(張手)⑤」の略。
[2] 〘接尾〙
① 弦をはった弓・琴などの類を数えるのに用いる。
② 張って作ったもの、張りめぐらして用いるもの、すなわち、ちょうちん・幕・蚊帳などを数えるのに用いる。
咄本・軽口御前男(1703)四「かや三はり」

ちょう チャウ【張】

[1] 〘接尾〙
① 弓・琴など、弦を張ったものを数えるのに用いる。
正倉院文書‐天平勝宝八年(756)六月二一日・東大寺献物帳「御弓壱佰張 梓御弓八十四張」
② 幕・蚊帳(かや)など張りめぐらすものを数えるのに用いる。
※多度神宮寺伽藍縁起資財帳‐延暦二〇年(801)一一月三日「鋪設〈略〉長茵肆拾玖張 廿六枚麻席廿三枚縄席」 〔春秋左伝‐昭公一三年〕
③ 紙や皮などを数えるのに用いる。
※今昔(1120頃か)六「懐の中より一張の文書を抜き出でて」
[2] 〘名〙 きばること。見えをはること。
浄瑠璃・桂川連理柵(おはん長右衛門)(1776)下「朝から芸子やおやまぐるひも、あんまり張(チャウ)でござらふ」
[3] 二十八宿の南方七宿の五番目。南方に位するもの。海蛇(うみへび)座のμ(ミュー)。中国の星座、朱鳥(しゅちょう)の張っている翼の部分にあたる。張宿。ちりこぼし。

ばり【張】

〘接尾〙
人数を表わす数詞に付いて、弓の強さを表わす。その人数をもってつるを張るような強さの弓の意。
保元(1220頃か)上「五人張の弓」
② 名詞や人の名の下に付けて、それに似ていること、その流儀を真似ていることを表わす。
※俳諧・三千風笈さがし(1701)上「これ如々楽助張(バリ)の煙筒(きせる)をふけば」

はらろ【張】

〘連語〙 (動詞「はる(張)」に、完了の助動詞「り」の連体形の付いた「張れる」にあたる上代東国方言) ふくらんでいる。芽をふいている。
※万葉(8C後)一四・三五四六「青柳の波良路(ハラロ)川門(かはと)に汝(な)を待つと清水(せみど)は汲まず立処(たちど)ならすも」

ば・る【張】

〘接尾〙 (四段型活用。動詞「はる(張)」の接尾語化したもの) 体言に付いて、動詞をつくる。ふつうの状態とは違って、その事が一段と顕著なさまである、その事を強く押し広げようとする様子をする、などの意を表わす。「かさばる」「気ばる」「四角ばる」「欲ばる」「格式ばる」「ぶ(武)ばる」など。

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デジタル大辞泉 「張」の意味・読み・例文・類語

ちょう【張】[漢字項目]

[音]チョウ(チャウ)(呉)(漢) [訓]はる
学習漢字]5年
たるまずに、ぴんとはる。横に広がりのびる。「張力拡張緊張伸張怒張膨張
意見などを大いに打ち出す。「誇張主張
[名のり]つよ・とも
[難読]尾張おわり

ちょう〔チヤウ〕【張】

[名]二十八宿の一。南方の第五宿。海蛇座の一部にあたる。ちりこぼし。張宿。
[接尾]助数詞。
弓・琴など、弦を張ったものを数えるのに用いる。
「弓は一人して二―三―、矢は四腰五腰も用意せよ」〈盛衰記・二二〉
幕や蚊帳かやなど、張りめぐらすものを数えるのに用いる。
「幕一―」〈延喜式・大蔵省〉
紙や皮などを数えるのに用いる。
「懐の中より一―の文書を抜き出でて」〈今昔・六・四一〉

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