張先(読み)ちょうせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「張先」の意味・わかりやすい解説

張先
ちょうせん
(990―1078)

中国、北宋(ほくそう)の官僚文人、詞人。字(あざな)は子野(しや)。湖州烏程(うてい)(浙江(せっこう)省呉興)の人。1030年(天聖8)欧陽修(おうようしゅう)とともに進士に及第し、各府州の通判(準知事)や知事を歴任、都官郎中の位で隠退した。晩年杭州(こうしゅう)(浙江省)で蘇軾(そしょく)(東坡(とうば))などと交わり、風雅の生活を楽しんで89歳の長寿を保った。唐代に始まる歌辞文芸「詞」において、日常生活を淡々と詠ずる新しいスタイルを確立、また和韻の詞をはやらせるなど、文人詞の流行の先駆けとなった。詞集に『張子野詞』二巻がある。

村上哲見

『中田勇次郎著『漢詩大系24 歴代名詞選』(1965・集英社)』『村上哲見著『中国詩文選21 宋詞』(1973・筑摩書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「張先」の意味・わかりやすい解説

張先
ちょうせん
Zhang Xian

[生]淳化1(990)
[没]元豊1(1078)
中国,北宋の詞人。烏程 (浙江省) の人。字,子野。天聖8 (1030) 年進士に及第。長安の知事晏殊 (あんしゅ) に招かれその通判になるなど,地方官を歴任。嘉祐6 (61) 年 72歳で都官郎中になり3年後辞任して郷里に帰ってしまった。在任中から名利には淡泊で風雅の生活をおくり,晏殊,欧陽修,王安石,蘇軾 (そしょく) らと交わって詞作を楽しんだ。詞風は清新で,また非常に多種詞牌を用いる点に特色があり,若干の慢詞 (長編) をすでに含み,柳永とともに,北宋初期までの艶麗を競う詞風を破った。詞集『張子野詞』。

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世界大百科事典(旧版)内の張先の言及

【詞】より

…はじめ都の開封で遊興にふけり,濃艶な詞が評判となるが,晩年は失意の苦悩と旅愁とが渾然と融合した名作を生んだ。同じころ張先(《張子野詞》)には文人官僚としての日常生活における佳作が多い。詞における和韻の応酬も彼を中心としてはじまったようである。…

※「張先」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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