弱い相互作用(読み)ヨワイソウゴサヨウ(英語表記)weak interaction

翻訳|weak interaction

デジタル大辞泉 「弱い相互作用」の意味・読み・例文・類語

よわい‐そうごさよう〔‐サウゴサヨウ〕【弱い相互作用】

自然界に存在する四つの基本的な力(相互作用)の一。名称電磁相互作用の約10万分の1の強さしかないことから。β崩壊π中間子崩壊などを引き起こす。非常に質量が大きいウイークボソンにより媒介されるため、力の到達距離は極めて短い。弱い力。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「弱い相互作用」の意味・わかりやすい解説

弱い相互作用
よわいそうごさよう
weak interaction

電磁相互作用のほぼ 1000分の1の強さをもち,光子と重力子以外のすべての素粒子が関与する相互作用。弱い相互作用と電磁相互作用を統一したワインバーグ=サラムの理論で記述される。弱い相互作用は質量約 90GeV/c2ゲージボソン ( W+,W-,Z ) の交換で生じ,到達距離約 2×10-18m の短距離である。β崩壊やハイペロン,μ粒子,π中間子,K中間子などの崩壊を引き起こす。弱い相互作用は,空間反転,時間反転,荷電共役変換のすべてに関して不変でなく,アイソスピンストレンジネスチャームボトム等の香り量子数の保存則を破る。1930年ウォルフガング・パウリはβ崩壊でのエネルギー保存則を満たすためにニュートリノを導入し,1934年にはエンリコ・フェルミによりβ崩壊の理論が提出された。1956年李政道と楊振寧パリティ非保存を提唱し,ただちに実験で確かめられた。さらに,1964年にはバル・ログスドン・フィッチとジェームズ・ワトソン・クローニンCPの破れ (時間反転の破れ) を発見。1973年小林誠益川敏英は 6番目のクォーク (トップクォーク) を導入して,CPの破れをワインバーグサラムの理論の枠内で記述する理論を提出した。これが今日の標準理論となっている。

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百科事典マイペディア 「弱い相互作用」の意味・わかりやすい解説

弱い相互作用【よわいそうごさよう】

相互作用

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世界大百科事典(旧版)内の弱い相互作用の言及

【相互作用】より


【物理学における相互作用】
二つまたはそれ以上の物質が互いに力を及ぼしあうこと。物質の基本的な相互作用としては,重力相互作用(重力),電磁相互作用(電磁力),弱い相互作用(弱い力)および強い相互作用(強い力)の4種類があることが知られている。相互作用をその強さの順に並べると,強い相互作用,電磁相互作用,弱い相互作用,重力相互作用となる。…

【素粒子】より

…すべての化学的反応は原子の中の電子の活動として理解することができ,それは電磁気力に支配されている。3番目の力は〈弱い力〉(弱い相互作用)である。この力は非常に短距離で作用し,また陽子を中性子にかえる働きをする。…

【素粒子物理学】より

…強い相互作用ではその強さが電磁力に比べてきわめて大きいために,いわゆる摂動論の方法が使えず,場の理論は行詰りを見せた。またβ崩壊を記述する弱い相互作用に関するフェルミの理論にしても摂動の最低次以上の計算はできず,電磁相互作用のときに使えたくりこみの方法はここでは無力であることが判明した。50年代になると弱い相互作用が空間反転を破っていること,すなわちパリティが保存されないことが明らかとなり,それまでの時空の対称性に関する独断に一撃を与えた。…

※「弱い相互作用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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