精選版 日本国語大辞典 「弟」の意味・読み・例文・類語
おと‐うと【弟】
〘名〙 (「おとひと(弟人)」の変化した語。「おとおと」とも) 年下のきょうだい。おとと。おと。
① 年下の男のきょうだい。⇔兄。〔二十巻本和名抄(934頃)〕
※源氏(1001‐14頃)賢木「おとうとの源氏にて、いときなきが元服の添臥(そひぶし)に取りわき」
② 年下の女のきょうだい。いもうと。
※古今(905‐914)雑上・八六八・詞書「妻(め)のおとうとをもて侍りける人に、うへのきぬを贈るとて、よみてやりける」
※十六夜日記(1279‐82頃)「古郷には恋ひ忍ぶをとうとの尼上にも文奉るとて」
③ 配偶者のきょうだいでその配偶者より年下の男。また、妹の夫。義弟。
④ 年下であること。
※俳諧・笈の小文(1690‐91頃)「かれは十六と云(いひ)けん里の童子よりは、四つばかりもをとをとなるべきを」
[語誌](1)「おと」は「劣る」の語幹と同源で、「え」と対をなして年齢の上下を区別した。平安時代の「おとうと」は、兄弟の間では①のように「あに」と対をなして弟を指し、姉妹の間では②のように「あね」と対をなして妹を指した。
(2)中世には「おとと」のほか、「おとおと」の語形も並存し、キリシタン文献の用法などからみて、「おとと」が一般の通用語で、「おとおと」はより丁寧な語感があったらしい。
(3)現代のように兄弟のうち年下のものを指すようになるのは江戸時代からであるが、なお④のように原義に近い用法もある。→いもうと
(2)中世には「おとと」のほか、「おとおと」の語形も並存し、キリシタン文献の用法などからみて、「おとと」が一般の通用語で、「おとおと」はより丁寧な語感があったらしい。
(3)現代のように兄弟のうち年下のものを指すようになるのは江戸時代からであるが、なお④のように原義に近い用法もある。→いもうと
てい【弟】
〘名〙
① 年下の兄弟。特に、年下の男の兄弟。おとうと。
※春鑑抄(1629)義「弟たるものは、兄にしたがふはよろしき処ぞ」 〔白虎通‐三綱六紀〕
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉三「師は若く、弟(テイ)は幼なく、共に理想の光明界を指して」
③ 自分のことをへりくだっていう語。
※随筆・山中人饒舌(1813)下「弟近年視レ之不三啻如二糞土一也」 〔杜甫‐狂歌行〕
④ =てい(悌)〔論語‐学而〕
おと‐と【弟】
〘名〙 (「おとうと」の変化した語) 男女にかかわらず年下のこと。また、その人。
※書紀(720)仁徳即位前(前田本訓)「夫れ、昆(このかみ)は上にして季(オトト)は下に、聖(ひじり)は君にして愚(おろか)なるは臣(やつこらま)なるは古今の典(のり)なり」
※愚管抄(1220)三「大草香の皇子は、安康のをととなり」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報