法律用語としては,まず民法178条が,動産に関する物権の譲渡には対抗要件として〈引渡し〉が必要であるとしており,そこでいう引渡しは占有の移転を意味し,現物を実際に引き渡す場合(現実の引渡し)のほか,簡易(の)引渡し(譲受人またはその代理人が現に占有物を所持している場合に当事者の意思表示のみによってなされるもの。182条2項),占有改定(自己の占有物を爾後は本人(譲受人)のために占有する旨の意思表示をして本人に間接占有を得させるもの。183条),指図による移転(代理人によって占有をしている者が,その代理人に対して爾後第三者のために占有するよう命じ第三者がこれを承諾するもの。184条)をも含む(〈占有〉の項参照)。しかし他方,民法182条1項等でいう〈引渡し〉は〈現実の引渡し〉のみをさす。
執筆者:黒田 満
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