精選版 日本国語大辞典 「式」の意味・読み・例文・類語
しき【式】
[1] 〘名〙
① ある物事をするについての定まった形式や方法、型、体裁。定まった法則。一定の標準。規則。式目。方式。のり。
※続日本紀‐天平宝字元年(757)一〇月乙卯「凡国司処二分公廨一式者」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「何の道にも式(シキ)のあるもので」
※出雲風土記(733)意宇「右の件(くだり)の郷(さと)の字は、霊亀元年の式(しき)に依りて、里を改めて郷と為せり」
③ 一定の作法をともなう行事。儀式。式典。
※栂尾明恵上人伝記(1232‐50頃)上「上人自ら祭文を草し、其の式を定め行ひ、終に高山寺の恒例の勤めとなる」
※尋常小学読本(明治三六年)(1903)〈文部省〉六「ぞーにをたべて、学校の祝の式(シキ)に、行きたり」
④ (「しきの…」の形で) 型通りのこと。通常のこと。普通のこと。
※とはずがたり(14C前)三「人々つぶやき申もありしかども、御ことはうちまかせたる、しきのく御、九こんなどつねのことなり」
⑤ 事情。有様。次第。様子。
※古今著聞集(1254)一三「心なき草木までも皆うちしほれたる世のしき、いまださめやらぬ夢の心地なり」
※太平記(14C後)一〇「何にもして此方へ御出候へ。此程の式(シキ)をば身に替へても申宥む可く候」
⑥ 「しきがみ(式神)」の略。
※宇治拾遺(1221頃)二「しきにうてけるにか、此烏は式神にこそありけれと思ふに」
⑦ (━する) 「しきれい(式礼)」の略。
※歌舞伎・隅田川花御所染(1814)三立「両人支度あり、二重舞台へ式(シキ)して竹刀を取上げ、色々立廻りあって、お初、霧島をしたたかに打つ」
⑧ 数学・物理学・化学などで、記号をつらねて対象、関係、法則などをあらわすもの。方程式・不等式・分子式など。〔工学字彙(1886)〕
⑨ 論理学で、三段論法を構成している三命題の質および量の相違によって生じるいろいろの形式。三段論法の種々の形式。推理式。論式。
⑩ =しょく(軾)①
[2] 〘語素〙 名詞に付いて、型・様式・方法などの意を表わす。「日本式」「洋式」「手動式」「電動式」など。
[語誌](1)(一)⑤の有様や様子、ことの次第を表わす意味は、本来の漢語「式」にはない日本独自のもので、一三世紀後半から現われる。特に、日記・文書など記録体の資料では、「散々」「不便」「言語道断」などの様態を表わす語句をうけて「…(之)式」の形で用いられ慣用化して、接尾語化した。
(2)「これしき」「我等(われら)しき」など接尾語としての用法は、この⑤の意味に由来し、言外にほのめかされる多数の同種同類のものを包含して卑下や軽視の感を添えるが、まれに、「たぼしき(女性の意)」「まるしき(金銭の意)」「あんばいしき」など、有様や様子を表わすのみで、卑下や軽視の意味をもたない用法もある。→しき〔接尾〕
(2)「これしき」「我等(われら)しき」など接尾語としての用法は、この⑤の意味に由来し、言外にほのめかされる多数の同種同類のものを包含して卑下や軽視の感を添えるが、まれに、「たぼしき(女性の意)」「まるしき(金銭の意)」「あんばいしき」など、有様や様子を表わすのみで、卑下や軽視の意味をもたない用法もある。→しき〔接尾〕
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