建設機械(読み)けんせつきかい(英語表記)construction equipment

改訂新版 世界大百科事典 「建設機械」の意味・わかりやすい解説

建設機械 (けんせつきかい)
construction equipment

土木機械ともいう。土木・建設工事に用いられる機械の総称。

古代における建設の方法は,主として人力と畜力に依存しており,わずかに水力や風力を利用していたにすぎない。大土木工事として有名なピラミッドは,ナイル川のはるか上流の採石場から切り出した石をいかだにのせて水路輸送し,人力のジブクレーンによって陸揚げし,石材運搬のための斜路を多数の人力によって綱で引き,滑車やてこなどの道具を利用して1個ずつ積み上げて完成させたものである。この事情は,中世,近世になっても,また地域によっても大きな変化は見られず,例えば,日本の大土木事業の一つに数えあげられる大坂城石垣などの築造も同様な方法で行われたのである。このように,大きな力を必要とする作業では,多数の人員の同時作業を行うか,または,斜面,滑車やてこなどの倍力装置を利用して作業速度を落とし実施するほかなく,そのため,当時の大土木工事は長年月を要するのを常とし,掘削,積込みおよび運搬作業のすべてにおいて膨大な人力と畜力を使役して完成されたのである。

 土木工事の本格的な機械化が始まったのは19世紀に入ってからで,その中心となったのは広大な未開拓の国土をもつアメリカであった。まず人力による土運車,車輪付きスクレーパー,木製の簡単なグレーダー,あるいは数頭の馬で牽引するグレーダーやブルドーザーが出現した。動力源は人力や畜力であったが,機械的な作業機構をとり入れることにより,当時の道路や鉄道工事において作業効率の向上に貢献した。その後,建設機械の動力源として蒸気機関がとり入れられ,強力な機械化が推進されるようになった。19世紀後半,アメリカで蒸気杭打機が開発され,杭の打込速度が速くなるとともに,ハンマーの重量が軽減され,基礎工事の能率化に成功している。また,かつてのスコップに代わる蒸気ショベル,蒸気トラクターや蒸気ローラーなども登場し,パナマ運河などの大土木工事の成功も,これらの機械の利用に負うところが大きい。内燃機関の利用は,20世紀に入って,アメリカでガソリンエンジンがキャタピラ式トラクターに導入されたのに始まるが,その後,ディーゼルエンジンがこれに代わり,掘削機,トラクターおよびグレーダーの動力源として重土工作業を飛躍的に発展させた。また,ゴムタイヤの発達により,ダンプトラック,ワゴンおよびモータースクレーパーなどが出現し,土砂の高速運搬が可能となった。とくに第2次世界大戦中,アメリカでは太平洋の島での飛行場建設などに関連して,ディーゼルエンジンを搭載した大型ブルドーザー,大型ダンプトラック,パワーショベルなどの大型建設機械が開発されたが,これら大型建設機械を用いた施工技術は,戦後における大ダム建設,高速道路建設などの基礎となったものである。

 日本で建設機械が利用され始めたのは1897年ころからで,淀川,利根川,信濃川などの大河川の改修工事に蒸気機関を用いた浚渫(しゆんせつ)船,バケット掘削機,機関車などが使用され,また1912年の品川駅拡張工事では蒸気ショベルが使用された。しかし,日本で建設工事の機械化が本格的となったのは,第2次大戦後,電源開発,治山治水事業が国土復興の柱として実施されるようになってからで,当初はアメリカ軍払下げの中型ブルドーザーが主力であったが,その後ブルドーザー,パワーショベル,スクレーパーおよびダンプトラックの国産化が進み,土木工事に広く使用されるようになった。なかでも,日本初の高さ150m級のダムである佐久間ダムの建設は,従来の日本の技術ではとても不可能と判断されていたものを,アメリカから大型建設機械および施工技術を導入,巨大な洪水量,30mにも及ぶ河床砂れきなどの障害を克服するとともに,ダム工法を革新した点でも画期的なものであった。

建設機械は,一般に原動機,動力伝達機構,作業装置,運転機構などから構成されている。建設機械では,機械的動力などのエネルギーを有効に利用して単位時間当りの作業量を向上させることにもっとも重点がおかれ,動力発生用の原動機もこの観点から選定される。機械本体の移動,または走行を伴って作業するものでは,個々の機械自身に動力を発生させる原動機と燃料タンクを設置しなければならないので,できるだけ熱効率の高い小型,軽量な原動機が必要で,低廉な燃料で長時間稼働できるディーゼルエンジンがもっとも有利となる。また,ベルトコンベヤ,岩石の破砕を主体とする砕石機械やコンクリート材料の調合を行うバッチャープラントなど機械自身は一定の場所に設置されるものでは,外部からの供給が容易であれば電力エネルギーを利用するのがもっとも有効で,この場合には原動機として電動機が用いられる。作業装置の動作は,往復運動,回転運動およびこの両者を組み合わせて得られるものが主であるが,リンク機構や制御システムを導入して複雑な動作ができるようにしたものも多い。このほか,建設機械の特徴としては,過酷な条件での使用に耐えうるよう頑強に作られていること,保守・整備が容易なこと,急傾斜地や軟弱地盤でも作業が行えるようキャタピラなど特殊な走行装置をもつものも多いことなどがあげられる。

 最近では土木工事の大型化と短期完成の要請から,大型の専用機械を開発することによって施工を合理化することが図られている。もちろん,建設機械は単独で用いられる場合も多いが,各種の専用機械を組み合わせて有機的なシステムを構成することにより,またさらに火薬類を利用した爆破工法と結合させることによって,工事規模の拡大,工期の短縮,工事の質の向上および工費の低減などが可能となる。

土木・建設工事は,地形を加工し地盤を造成するとともに,軟弱地盤を改良してその上に構造物を築造するものである。したがって,その中には,(1)土砂の掘削,積込みおよび運搬を行う土木作業,(2)岩盤掘削のためのせん孔を行う岩石工作業,(3)軟弱地盤を補強するための杭打作業などの基礎工事,(4)砂,砂利,岩石などの構造材料を得るための骨材製造,(5)コンクリート構造物の施工,(6)盛土や道路などの土構造物建設のための整地,締固めや舗装作業,(7)河川や海洋における浚渫作業などがあり,さらに道路の維持・補修,除雪作業やその他補助のための諸作業なども広い意味では土木・建設工事に含まれる。このように各種の工事があるため,建設機械も,それぞれの作業を専門に行う専用機,数種類の作業を行う汎用(はんよう)機など多くの種類が実用化されている。土工作業における汎用機としては,掘削,運搬を行うブルドーザーやスクレーパーがあり,また,掘削専用機械のパワーショベル,各種の積込専用機械,運搬専用機械のダンプトラックなどは,それぞれの専用作業を組み合わせてアースダム建設などの大土工事業に用いられている。岩石工作業用機械としては,発破用のせん孔機械,トンネル掘削を行うトンネルボーリングマシンなどがある。基礎工事用機械としては,杭打機や,硬土盤掘削のためのベノト掘削機(フランスのベノト社の開発)などの専用機がある。骨材製造用の機械としては,岩石を破砕する種々のクラッシャー,選別機や分級機があり,また,コンクリート工事用機械としては,セメント輸送装置,各種材料を計量してミキサーに投入するバッチャープラント,コンクリートミキサー,コンクリート運搬機およびコンクリート振動機などがある。盛土工事における整地作業にはグレーダー,締固め作業にはローラー,ランマーや振動締固め機が使用されている。道路の舗装工事には,アスファルトやコンクリート舗装機械,舗装補修機械があり,また,道路除雪機械として,除雪トラック,ロータリー除雪車などが開発されている。河川や海底掘削のための浚渫作業には,陸上のクラムシェルに相当するグラブ船,ラダーに多数のバケットを連結させて掘削するバケット船,パワーショベルの作業機構を採用したディッパー船や,サンドポンプで海底土砂を吸い上げるポンプ船など各種の浚渫(しゆんせつ)船が使用されている。そのほか,建設作業の補助機としては,クレーン,ウィンチ,空気圧縮機,送風機,ポンプおよび種々の原動機がある。

建設機械のコラム・用語解説

【建設機械の種類】

[掘削機械 excavator]
パワーショベル power shovel
単にショベルともいう。旋回できる機械台に,上下,左右に運動できる長い柄(ブーム)のついたバケット(ショベルという)を取り付けたもので,地面より高いところの掘削に適し,土砂から軟岩に至るあらゆる山土の掘削作業に使用される。ショベル容量は0.3m3から30m3程度のものまである。また,作業用のアタッチメントの交換によって,バックホウ,ドラグライン,クラムシェル,クレーンなどとしても利用できる。
バックホウ back-hoe
ドラグショベルともいう。基本構造はパワーショベルと同じで,溝掘りや基礎の根掘りなど,地面より低い場所の土砂を掘削するのに用いられる。ショベル容量は,0.3~3.1m3,最大掘削深さは3.7~9.6m。
ドラグライン dragline
ワイヤロープによって長いブームからつり下げたバケット(容量0.3~3.1m3)を,手前に引き寄せて掘削を行う機械で,地面より低い表土のはぎ取り,水路の掘削や浚渫,砂利採取などに使用されるが,掘削力が劣り硬土盤の掘削には適していない。
クラムシェル clamshell
ブームからワイヤロープによってつり下げた開閉するバケット(グラブという)によって掘削を行う機械。構造物基礎の根掘りや水中掘削など狭い範囲での深い掘削のほか,砂,砂利,砕石および石炭などの荷役作業にも使用される。海底掘削用にはバケット容量35m3のグラブ船も開発されている。
バケットホイールエキスカベーター bucket wheel excavator
周辺に多数のバケットを取り付けた大型のホイールを回転させて,連続的に土砂の掘削を行うとともに,掘削した土砂を,自身に備わったベルトコンベヤに積み込む連続掘削積込専用機械。
[積込機械 loader]
トラクターショベル tractor shovel
ショベルローダーともいう。トラクターに油圧操作によるバケット装置を取り付けたもので,主として,土砂のダンプトラックなどへの積込作業を行う。走行装置にキャタピラを用いた履帯式とタイヤを用いたタイヤ式とがある。前者は,接地圧が低く,軟弱地や不整地での作業や除雪作業にも使用でき,後者は,走行速度が速く,機動性に富み,道路上でも自由に走行して目的の現場まで手軽に移動できる利点がある。バケット容量1.0~1.5m3のものが多い。
[運搬機械]
ブルドーザー bulldozer
トラクターに排土装置(ブレード)を取り付けた機械で,土の運搬だけでなく掘削,敷きならしなどにも使用され,建設機械の中でも汎用性の高い代表的機械である。重量3t程度の小型のものから50tを超す大型のものまで各種製作されており,また岩盤掘削のためのリッパー作業にも用いられる。履帯式が多いが車輪式もある。
スクレーパー scraper
土砂の掘削,積込み,運搬,捨土や敷きならしの作業を連続して行う機械。車体の下部の刃で表面の土砂を削って容器(ボウルという)に積み込み,目的地まで運んで捨てる。自走できるもの(モータースクレーパー)とトラクターによって牽引されるものとがある。
ダンプトラック dump truck
ダンプカーと通称される。長距離の運搬専用車両で,荷台を動力によって傾斜できるようにしたトラック。一般の道路は走行せず作業現場でのみ使用されるものには積載重量50tを超えるものもある。
[整地機械 grading equipment]
グレーダー grader
前後のタイヤの中央部に上下,左右に動く作業板をもち,これによって路面を平滑に整地したり,所定の溝を整形する機械。被牽引式のものと自走式のもの(モーターグレーダー)とがある。
[締固め機械]
ロードローラー road roller
主として道路建設において,鉄輪のローラーによって土砂,れきなどの路盤材料やアスファルト舗装材料を締め固める自走式機械。重量は10t前後のものが多い。平滑胴のローラー以外にも,ローラーの表面に突起を植えつけ締固め効果を向上させたもの(タンピングローラー)もある。
タイヤローラー tire roller
空気入りタイヤを利用して締固め作業を行う機械。砕石などの締固めには空気圧を上昇させ,また,支持力の弱い地盤では空気圧を減少させて締め固めるなど広範囲にわたる締固めが可能である。
振動ローラー vibrating roller
ローラー内に取り付けてある起振装置で発生させた振動エネルギーを利用して締固めを行う機械。ロードローラーに比べて軽量であり,砂や砂利の締固めに効果がある。
振動コンパクター vibrating compactor
平板上に取り付けた起振機の振動によって砂質地盤を締め固める機械。
ランマー rammer
内燃機関の爆発力によって機械全体に跳躍運動を与え,地表に落下するときの衝撃によって土を締め固める機械。小型ガソリンエンジンや圧縮空気などの原動力をばねを介して打撃板に伝え,打撃と振動によって締固めを行う小型締固め機械をタンパーtamperという。
[岩石工用機械]
削岩機 rock drill
採石や岩石の除去のために行う爆破作業において,火薬を挿入する穴をあけたり,爆破された岩石を小割りにするため,あるいは基礎工事におけるグラウト注入のための穴をあけるのに用いられる機械。駆動には,圧縮空気,電動機,内燃機関が使用される。削孔機構から衝撃式と回転式に分けられる。
リッパー ripper
油圧によりシャンクと称する腕を岩盤に貫入させ,岩を破壊させる機械。ブルドーザーやトラクターの後部に取り付けられたり,牽引される。爆破工法に代わるものとして,多く使用されるようになった。
[コンクリート工用機械]
バッチャープラント batcher plant
コンクリートプラントともいう。セメント,骨材,水,混和材料などのコンクリート材料を計量して混合し,生コンクリートを作る装置。
アジテーター agitator
計量混合したコンクリートを打設現場に輸送する際に,コンクリートが分離を起こさないようにかくはんする装置。アジテーターを備えたトラックをアジテータートラックという。トンネル工事に用いられるアジテーターカーは,レール上を牽引,または自走する台車にミキサードラムを取り付けたものである。
コンクリートミキサー concrete mixer
均質なコンクリートを作るために,セメント,骨材および水などを練り混ぜる機械。重力を利用して材料を回転落下させて混合する不傾式ドラムミキサーや可傾式ミキサー,かくはん羽根を用いた強制練りミキサーなどがある。
コンクリートポンプ concrete pump
配管されたコンクリート輸送管を用いてコンクリートを機械的に連続圧送する機械。クランク機構油圧シリンダーによる往復運動でホッパー内のコンクリートを吸入吐出させる。
コンクリート振動機 concrete vibrator
コンクリート打設の際,練り混ぜたコンクリートに振動を与えてコンクリート中の空気を追い出し,緻密(ちみつ)で強度の高いコンクリートを作ったり,表面の仕上げを行う際に用いられる機械。棒状の内部振動機やテーブル振動機などがある。
[基礎工事用機械]
杭打機 pile driver/pile hammer
おもりや下部におもりのついたピストンを杭の頭に落下させて杭を打ち込む機械。起振機を用いた振動杭打機や油圧により静かに杭を地中に貫入させるものもある。
[舗装用機械]
フィニッシャー finisher
アスファルトやコンクリートを,路盤上に所定の幅で均一に敷き広げたのち,規定の厚さに敷きならす機械。
ロードスタビライザー road stabilizer
路床,路盤の安定処理のために,あらかじめ配合設計された路盤材料とセメントやアスファルトなどの添加剤を路床上に散布して,これらが均質になるように路上で混合する機械。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「建設機械」の意味・わかりやすい解説

建設機械
けんせつきかい

土木・建築工事に使用される機械の総称。建機、工事機械ともいう。建設工事の種類は、道路、鉄道、港湾、空港、上下水道、治山、治水、発電所、工場、ビル建築など広範囲にわたり、さらに各種工事は土工、基礎工、コンクリート工などの工種別に分類される。建設機械もこれら工事の多様性を反映して、きわめて多くの種類がある。建設機械は産業機械の一分野として分類されるが、鉱山機械、農業機械、産業車両などとの区分はかならずしも明確ではない。建設工事専用の機械のほかに、鉱業、農業などで使用される機械を建設機械に転用する例も多く、自動車や船舶として分類されるもののなかにも建設工事専用のものがある。

[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]

沿革

ピラミッド、ローマ水道、万里の長城、仁徳(にんとく)天皇陵など大規模な建設工事は古くから行われていた。その施工技術としては鍬(くわ)、スコップ、荷車、そり、滑車、てこ、ころなどが主で、比較的進んだものとしては巻上げ機、排水機などであった。道路上にころを敷き、その上に巨石などの重量物をのせ、それに綱を巻き付けて引っ張った。重い物を持ち上げるのには滑車を利用した起重機を使用した。ローマのウィトルウィウスの著書『建築十書』には、起重機など建設機械、石灰など建築材料、またポンプその他各種の機械、家屋、神殿、浴場などの建築についての記述がある。

 16世紀、ダ・ビンチの書き残したスケッチには、当時使用されていた建設機械が数多くみられる。重く長い柱を持ち上げる機械、ねじを利用したジャッキ、滑車を多数取り付けてわずかの力で重い物を持ち上げる装置、船に荷物を積み下ろすための起重機、製材用の機械、自動鋸(のこぎり)などである。15世紀の終わりごろ、ドイツのリューネブルクで船の荷物の積み下ろし用につくられたクレーンは、今日のクレーンの原形ともいえるものであった。このクレーンの中心部にある直径5メートルの大きな車輪の内側にある踏み板を人間が動かすことにより巻上げ用のチェーンを巻き取るようになっている。これらの建設機械の動力は人力または畜力であった。

 18世紀終わりに蒸気機関が実用化するに及び、建設機械の動力として蒸気機関が用いられるようになった。19世紀になると鉄製の建設機械が登場し、1920年代には動力機械として内燃機関、さらに電動機が用いられるようになった。建築・土木機械は、19世紀なかばころより主としてアメリカにおいて開発が進んだ。

 日本では、江戸末期につくられた洋式工場建設のために欧米から機械が輸入されたのが、建設機械利用の最初であった。1863年(文久3)長崎製鉄所の建設に海中工事用ケーソン(潜函)が使われ、1867年(慶応3)横須賀製鉄所のドックでは蒸気機関で動く排水用ポンプが使用された。続いて明治になると治山治水、港湾、鉄道、トンネルなどの大規模工事に西欧の建設機械が輸入された。1886年(明治19)木曽(きそ)川改修工事にはオランダから浚渫(しゅんせつ)船が輸入され、さらに10年後、中央線笹子(ささご)トンネル工事には圧縮空気を利用した送風機、削岩機が導入された。

[中山秀太郎]

 日本で建設工事が機械化したのは1897年(明治30)ごろからで、蒸気式の建設機械が輸入使用され、1920年代ごろから内燃機関、電動機が原動機として用いられるようになった。これらの機械は河川、港湾、鉄道などの土木工事に用いられている。今日みられるような大型建設機械が日本に登場したのは第二次世界大戦以降である。1950年(昭和25)ごろからブルドーザー、ショベル系掘削機、杭(くい)打ち機、トラックミキサー、コンクリートポンプなど各種の機械が相次いで国産化され、ビル建設や佐久間(さくま)ダムをはじめとする電源開発工事などの活発化に伴い急速に普及した。1960年代以降、高速道路、新幹線、超高層ビル、大ダム、長大トンネル、海峡横断橋、大型地下構造物など高度の技術を要する大規模工事が次々と実施された。これに対応して建設機械も多様化の傾向が著しく、順次、大型、高出力のものが開発された。日本の建設機械生産額の約3割を占めるトラクター系土工機械についていえば、重量2~3トン以下のものから重量80トンを超える超大型ブルドーザーまで製作されている。

[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]

建設機械の特徴

一般に建設機械は、土砂、岩石、コンクリート、アスファルトなどの建設材料を取り扱い、野外で作業するもので、工作機械、自動車などに比べて過酷な条件で使用される。したがって、耐久性を向上させるため、衝撃、振動などに耐えうる構造、材料を用い、防塵(ぼうじん)・防水性などの向上が図られている。汎用(はんよう)性が重視され、一つの機械を付属装備品を交換することによって多目的に使えるようにする方式が多用され、移動、輸送の容易性や整備の簡易化などにも考慮が払われている。また、高出力化、耐久性の向上などに加えて、安全性や環境対策がいっそう重視される傾向にある。1970年代以降、低騒音、低振動の建設機械の開発が進み、機械の安全性向上やオペレーターの居住性、操作性の向上が図られ、さらに省資源、省エネルギーの要請を背景に建設機械の低燃費化、効率化が指向されている。

[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]

建設機械の規格

日本産業規格(JIS(ジス))において、建設機械に関係した製品、性能試験方法、仕様書様式などの規格が制定されている。団体規格としては一般社団法人日本建設機械施工協会規格(JCMAS)がある。国際規格としては国際標準化機構(ISO)において土工機械の統一規格が作成されている。

[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]

『日本建設機械化協会編・刊『日本建設機械要覧』(1983)』

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百科事典マイペディア 「建設機械」の意味・わかりやすい解説

建設機械【けんせつきかい】

土木機械とも。建設工事に使用される機械の総称。パワーショベルブルドーザー等の掘削機械,ダンプトラック(ダンプカー)等の運搬機械,モーターグレーダー等の整地機械,アスファルトフィニッシャー等の舗装機械,バッチャープラント等のコンクリート機械,その他杭打(くいうち)機クレーン浚渫(しゅんせつ)船など工事の種類・目的に応じ種類が多い。
→関連項目ドラグラインバックホーランマー

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「建設機械」の意味・わかりやすい解説

建設機械
けんせつきかい
construction machinery

建設工事に使用する種々の機械の総称。建設機械を分類すると,その用途によって十数項目に分れるが,おもなものは,掘削機械,運搬機械,骨材機械,コンクリート機械,舗装機械などである。

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