建甌(読み)けんおう(英語表記)Jiàn ōu

改訂新版 世界大百科事典 「建甌」の意味・わかりやすい解説

建甌 (けんおう)
Jiàn ōu

中国,福建省北部の都市。人口48万(2000)。閩江(びんこう)の支流建渓(南浦渓)に松渓が合流する地点にあり,古来,江西,浙江と福建を結ぶ交通の要衝。福建省の建の字は,ここに置かれた建州(建寧府)に由来する。三国呉の永安3年(260)建安県がここに置かれ建安郡治となった。この郡は隋・唐時代建州と改称され,南宋に建寧府に昇格して清代に至る。北宋の1066年(治平3)甌寧県が分置され,1913年の改革まで建寧府治には建安,甌寧2県があった。現在は両者が併合され建甌という。五代の南唐が開発してから上流の武夷山系の高級茶の集散地として名高く,とくに宋代建茶は皇室御用の高級品を意味した。南宋時代,この地出身の朱熹官界からしりぞき学問を講ずるようになると道学のメッカとなり,朱,蔡,游,劉の四名家を中心に学者が輩出し,多くの書院が作られた。北西の崇安県麻沙鎮が当時出版文化の中心となったのもそれと関連する。現在は鉄道から離れ水運の地方的中心にすぎない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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