(読み)はえる

精選版 日本国語大辞典 「延」の意味・読み・例文・類語

は・える はへる【延】

〘他ア下一(ハ下一)〙 は・ふ 〘他ハ下二〙 (「はう」に対応する他動詞形)
① 糸・紐(ひも)・綱や、布・袖などを長く引きのばす。のばしひろげる。長くはわせる。
万葉(8C後)五・八九四「墨縄を 播倍(ハヘ)たる如く」
② 転じて、心情ことばなどを相手に届くようにする。心をよせる。ことばをかける。
古事記(712)中・歌謡「蓴(ぬなは)繰り 波閇(ハヘ)けく知らに 我が心しぞ いや愚(をこ)にして 今ぞ悔しき」
③ 数を順次ふやす。
浄瑠璃吉野忠信(1697頃)三「数へて見ればこはいかに十といひつつ四つはへて」
[補注]室町時代頃からヤ行にも活用した。→はゆ(延)

えん【延】

〘名〙
② 「延長」の意。長いこと。
米欧回覧実記(1877)〈久米邦武例言「英の一『エーカー』は、我四段二十歩に当る、五『エーカー』にて、我二町に比較し、只百歩の延と知るべし」

は・ゆ【延】

〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段活用「はふ」から転じて、室町時代頃から用いられた語) =はえる(延)
日葡辞書(1603‐04)「シキモノヲ fayuru(ハユル)

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デジタル大辞泉 「延」の意味・読み・例文・類語

えん【延】[漢字項目]

[音]エン(呉)(漢) [訓]のびる のべる のばす ひく
学習漢字]6年
長くのびる。のばす。「延焼延長延命圧延蔓延まんえん
時間予定より長びく。「延引延滞順延遅延
引き入れる。招く。「延見
[名のり]すけ・すすむ・ただし・とお・なが・のぶ・のぶる
難読延縄はえなわ

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改訂新版 世界大百科事典 「延」の意味・わかりやすい解説

延 (のび)

中世において枡の大小から生じる計量上の増加分。私枡の種類が急激に増加した平安時代末期から鎌倉・室町時代にかけて,大きな枡で量った年貢米等を小さな枡で再計量する必要が少なくなかった。例えば各地の荘園からの年貢米等をそれぞれ異なる量の荘枡で収納した領主は,これを消費にあてるためには,それらより小さな領主枡あるいは下行(げぎよう)枡で統一的に量り直さなければならなかった。このようにして生じた計量上の増加分を,一般に〈延〉,ときには〈交分(きようぶん)〉と称した。そしてこれらは,現地において計量に関与した荘官代官等の給与にあてられた例もある。さらにまたきわめてまれな例ではあるが,荘枡が領主側の枡より容量が少ないために,枡目が減少する場合もあった。このような減少分は,とくに〈縮(ちぢみ)〉と呼んだ。
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