日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
延長(extension)
えんちょう
extension 英語
extension フランス語
Ausdehnung ドイツ語
物体はすべて空間上に位置し、ある形と大きさをもって空間の一部を占めている。物体のこのような広がりが延長といわれ、物体の基本的な性格としてしばしば注目されてきた。とくにデカルトでは、延長は心とともに実体とされた物体の本性と規定され、物体の世界の現象はすべてこの延長とその運動としてとらえられている。スピノザにおいては、物体は実体である神の属性の一つとされているが、そうした物体の本性としては、やはり延長が考えられていた。またロックにおいても、延長は第一性質として固体性などとともに実在性をもったものと考えられていた。
しかしカントになると、延長は物自体の属性とはされず、純粋直観の形式とされ、「直観の公理」によって経験の対象となる限りの物体の性格とされる。すなわちカントでは、延長はその実在性が否定され、ただ経験的な実在性をもつものとされている。
[清水義夫]
『デカルト著、落合太郎訳『方法序説』(岩波文庫)』