幽門狭窄(読み)ユウモンキョウサク

デジタル大辞泉 「幽門狭窄」の意味・読み・例文・類語

ゆうもん‐きょうさく〔イウモンケフサク〕【幽門狭×窄】

胃の幽門部が狭くなり、食物通過のよくない状態潰瘍かいよう腫瘍しゅようが発生したときなどにみられ、胃拡張嘔吐おうとなどを伴うことがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「幽門狭窄」の意味・わかりやすい解説

幽門狭窄
ゆうもんきょうさく

胃から十二指腸への出口にあたる幽門部の内腔(ないくう)が狭くなって、胃内容がうまく通過しない状態の総称。主症状は嘔吐(おうと)で、そのほか胃内容が停滞して胃拡張をおこす。食物の摂取、吸収が思うようにならず栄養低下をきたし、ひどくなると食物が全然通らず、放置すれば死亡する。

 原因として、まず幽門部あるいは幽門近傍の消化性潰瘍(かいよう)や腫瘍(しゅよう)があげられる。前者では潰瘍が治癒に向かう過程で強いひきつり(瘢痕(はんこん)性収縮)をおこし、内腔が狭められて生ずるものが多く、後者では癌腫(がんしゅ)によるものが多い。いずれも手術が必要である。次に、乳児の幽門狭窄の多くは、肥厚性幽門狭窄症によるもので、アトロピンによる保存的治療が奏功しない場合や、幽門部筋肉の著明な肥厚を腹壁上より明らかに腫瘤(しゅりゅう)として触れたり、超音波検査で確認でき、症状も著しい場合には外科手術が必要となる。

松木 久]

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改訂新版 世界大百科事典 「幽門狭窄」の意味・わかりやすい解説

幽門狭窄 (ゆうもんきょうさく)
pyloric stenosis

幽門の狭窄によって胃内容物の通過障害の起きた状態をいう。幽門は胃と十二指腸の境にあり,胃内容の腸への送出しを微妙にコントロールしている。この部位は消化管のなかで最も細い部位であり,種々の病変によって通過障害を起こしやすい。各年代層にわたってみられるが,それぞれ原因を異にする傾向にある。新生児にみられるものは幽門肥厚症で,幽門括約筋が肥厚して開きが悪くなることによって起こる。一般的に出生直後は異常はないが,2~3週後に乳を吐くようになり,しだいに悪化していくのが特徴である。青年期にみられる幽門狭窄は大部分十二指腸潰瘍によるもので,胃内に何日も前の食物が残存し,胃は著しく拡張する。中年以降の原因としては,十二指腸潰瘍のほかに癌がある。この両者は症状からは鑑別できない。放置すれば嘔吐と食欲の低下によりしだいに衰弱が進行する。幽門狭窄は原因のいかんを問わず外科的処置を必要とすることが多く,とくに癌によるものは絶対的に手術が必要である。
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百科事典マイペディア 「幽門狭窄」の意味・わかりやすい解説

幽門狭窄【ゆうもんきょうさく】

幽門部の内腔が狭くなった状態。食物が腸へ移行しにくくなり,胃が拡張して膨満感,嘔吐(おうと),疼痛(とうつう)などを呈する。原因は幽門痙攣(けいれん),幽門肥厚,胃癌胃潰瘍(かいよう)など。治療は原因に応じて胃腸吻合(ふんごう),胃切除などを行う。

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