幸菱(読み)さいわいびし

精選版 日本国語大辞典 「幸菱」の意味・読み・例文・類語

さいわい‐びし さいはひ‥【幸菱】

〘名〙
① 装束文様の名。花菱を組み合わせた繁文(しげもん)で、さきあいびし(先間菱)、せんけんびし(先間菱・先剣菱)ともいう。近世、吉祥名として「先間(さきあい)」に「幸(さいわい)」の字をあてたもの。
※俳諧・毛吹草(1638)五「きてや見んさいはいびしの水のあや〈休音〉」
紋所の一つ。装束文様を単独にとりあげた家紋武田氏の家紋として名高い。
浄瑠璃・曾我扇八景(1711頃)上「先汝が定紋、幸びし武田党に紛らはし」

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デジタル大辞泉 「幸菱」の意味・読み・例文・類語

さいわい‐びし〔さいはひ‐〕【幸×菱】

文様の一。花菱を組み合わせた繁文しげもんで、もとの名は先間菱さきあいびしといい、「せんけんびし」と音読もする。近世、縁起をかついで「先間さきあい」に「幸」の字を当てたもの。

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世界大百科事典(旧版)内の幸菱の言及

【ヒシ(菱)】より

…おもに連続文として菱繫(ひしつな)ぎや,斜線を基本として文様化した襷文(たすきもん)として用いられる。中国唐朝で好まれた実在しない花を菱形にデザインした唐花菱,有職文(ゆうそくもん)の一つで4から20の花菱で一つの大きな菱を構成する幸菱(さいわいびし),おもに織物などの地文に用いられ菱文が隣接して並ぶ繁菱(しげびし),間隔をおいて並ぶ遠菱(とおびし),菱を4等分した割菱で甲斐武田氏が用いた武田菱(たけだびし),菱形の中に順次小さな菱を入れてゆく入子菱(いれこびし),小さい菱形をたすき状に並べた菱襷(ひしだすき),鳥文(とりもん)をたすき状に並べ間に唐花(からはな)を置いた鳥襷(とりだすき)などがある。中世の密教寺院の内陣・外陣の間仕切りには菱格子が多く用いられ,また青森,秋田地方のこぎん,菱刺しは菱繫ぎ文様に特色がある。…

【有職文様】より

…(2)菱文 丸文と同様の主題を菱形にまとめたもののほか,菱形を四つ組み合わせた四菱(よつびし),これを密に並べた繁菱(しげびし)と,これを間隔をおいて互の目(ぐのめ)に配置した遠菱(とおびし)がある。また,菱形を二重,三重に重ねた入子(いれこ)菱,菱の先端を互いに接しその接点に小型の菱文を置いた幸菱(さいわいびし)(千剣菱(せんけんびし))もある。(3)襷(たすき)文 斜線が交差した文様で,羅文,菱格子ともいわれる。…

※「幸菱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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