年の市(読み)としのいち

精選版 日本国語大辞典 「年の市」の意味・読み・例文・類語

とし【年】 の 市(いち)

年末に、新年飾り物食品台所用品などを売る市。《季・冬》
俳諧・続虚栗(1687)冬「年の市線香買に出ばやな〈芭蕉〉」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「年の市」の意味・読み・例文・類語

とし‐の‐いち【年の市/歳の市】

新年の飾り物や正月用品を売る、年末に立つ市。 冬》
[類語]市場河岸バザールマーケット取引所朝市競り市草市蚤の市バザーフリーマーケットガレージセール

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「年の市」の意味・わかりやすい解説

年の市
としのいち

年末に正月用品を買い整えることを主目的として開かれる市。歳の市とも書く。毎月定期的に行われる市のうち年末のものをいう。昔はハレ(晴)とケ(褻=日常)との格差が大きく、正月を迎える気持ちも新鮮であったから、秋の農作物の売上げ代金を持って行って市で買い物をした。正月用品のうち自給の困難なもの、日常よりは高級な食べ物や衣類、かねて買いたいと思っていた品物などである。都市に商業が発達し分業態勢が整うと分業化が始まる。社寺境内で開かれる羽子板(はごいた)市、門松を売る松市、注連(しめ)飾りのガサ市などがある。東京世田谷(せたがや)のぼろ市では雑多な物を売る。東京では深川八幡(はちまん)宮(12月14、15日)、浅草観音(かんのん)羽子板市(17~19日)、麹町(こうじまち)の平河天神(25、26日)、近在では埼玉県さいたま市大宮区の氷川(ひかわ)神社、鎌倉の長谷(はせ)観音の市が著名。大晦日(おおみそか)の市を捨市(すていち)といい、捨て値で売ったが、いまもその傾向は残っている。

[井之口章次]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「年の市」の意味・わかりやすい解説

年の市【としのいち】

年の暮に正月用の飾物や雑貨類を売る市。注連(しめ)飾,若水桶(おけ),三方縁起物などを売り,土地により特色のある市が立つ。江戸では浅草観音,深川八幡,神田明神などが有名であった。近年は百貨店や商店街で年の市と称する売出しも行われる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android