平調(読み)へいちょう

精選版 日本国語大辞典 「平調」の意味・読み・例文・類語

へい‐ちょう ‥テウ【平調】

〘名〙
① 穏やかな調子。平常の状態。また、安定し落ち着いていること。
※文学者となる法(1894)〈内田魯庵〉四「唯美くしてゐるばかりでは余り平調(ヘイテウ)で面白くない」 〔後漢書‐宋均伝〕
中国音楽の調名の一つ。漢代には、俗楽(清商三調、相和楽など)の音階で、唐の俗楽二十八調の制定で、調名となった。日本雅楽六調子十二律の一つ、平調(ひょうじょう)のもとになるもの。〔魏書楽志
③ 中国の調弦法の一つ。わが国の三味線本調子に当たる。中国の音階名では、最低弦(一の糸)から、合(ほう)・四(すい)・六(りゅう)の調子。
※わらんべ草(1660)一「唐には、平調を用る。金は宝成故也」

ひょう‐じょう ヒャウデウ【平調】

〘名〙
① 雅楽十二律の音名の一つ。基音である壱越(いちこつ)から三番目の音。中国十二律の大簇(たいそう)西洋音楽のホ音に相当する。
今昔(1120頃か)一九「奥深かに箏の音少許聞ゆ、律に被立て平調の音なり」
② 雅楽の六調子の一つ。平調の音を主音、すなわち宮音とする調子。
源氏(1001‐14頃)紅葉賀「箏の琴は中の細緒の堪へがたきこそ所せけれとて、ひょうてふにおし下して調べ給ふ」

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デジタル大辞泉 「平調」の意味・読み・例文・類語

へい‐ちょう〔‐テウ〕【平調】

おだやかな調子。いつもの調子。
今夜の私の頭は―を失っている」〈森田草平煤煙
中国の三弦の調弦法の一。日本の三味線の本調子にあたる。一の糸からほうすいりゅうの調子になっている。

ひょう‐じょう〔ヒヤウデウ〕【平調】

日本音楽十二律の一。基音の壱越いちこつより二律高い音で、中国の十二律の太簇たいそう洋楽のホ音にあたる。
雅楽の六調子の一。1の音を主音とする旋法。

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改訂新版 世界大百科事典 「平調」の意味・わかりやすい解説

平調 (ひょうぢょう)

日本音楽の用語。十二律の一つ。基音である壱越(いちこつ)の音から3律目の音で,洋楽のホ音とほぼ同じ高さの音。雅楽でこの音を主音とする調子を同じく平調という。六調子の一つで律呂(りつりよ)のに属するとされる。
十二律 →六調子
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普及版 字通 「平調」の読み・字形・画数・意味

【平調】へいちよう

ととのう。

字通「平」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の平調の言及

【楽譜】より

…五音略譜では〈宮〉の音高が不明なのでまずそれを規定する必要がある。さらに,平調(へいちよう)と界面調の旋法によって,〈宮〉―の間の音程が平調では長2度,界面調では短3度と互いに異なるので,その曲の旋法が不明であると,その音程を知ることができないという短所もある。世祖(在位1455‐68)のころ考案され,《世祖実録》《時用郷楽譜》(16世紀初),《大楽後譜》(1759)などに用いられたが,現在は実用されない。…

【五声】より

…すなわち,ニ・ホ・ト・イ・ロという音程関係を宮・商・角・徴・羽にあてはめたもので,中国の徴調の五声に相当し,同じ形が後に律の五声と呼んだものにみられる。つまり唐俗楽二十八調中,日本に伝来した調の主音は,壱越(いちこつ)(ニ),平調(ひようぢよう)(ホ),双調(そうぢよう)(ト),黄鐘(おうしき)(イ),盤渉(ばんしき)(ロ)の五つであり,壱越は唐の古律の太簇(たいそう)であるが,俗律の黄鐘(こうしよう)とも考えられたので,日本ではこれを基準音とみなし,これを宮として以下4声を順次並べて徴調の五声音程の新五声(徴・羽・宮・商・角を宮・商・角・徴・羽と呼びかえたもの)を生じた。そののち鎌倉時代の声明家の間でしばしば論争が行われたが,結局,五声を説く場合,雅楽でも声明でも(りよ)は中国理論のままの宮調型五声,は徴調型の五声を述べるのがならわしとなった。…

【六調子】より

…6種とは,壱越(いちこつ)調(壱越が宮(きゆう)(五音(ごいん)の主音)。(りよ)),平調(ひようぢよう)(平調が宮。),双調(そうぢよう)(双調が宮。…

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