平衡胞(読み)ヘイコウホウ(英語表記)statocyst

デジタル大辞泉 「平衡胞」の意味・読み・例文・類語

へいこう‐ほう〔ヘイカウハウ〕【平衡胞】

無脊椎動物平衡器官。袋状で内壁感覚毛があり、平衡石が入っている。平衡嚢耳胞。聴胞。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「平衡胞」の意味・読み・例文・類語

へいこう‐ほう ヘイカウハウ【平衡胞】

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「平衡胞」の意味・わかりやすい解説

平衡胞 (へいこうほう)
statocyst

無脊椎動物平衡器官,すなわち重力方向に対する体の姿勢を知覚する器官で,外胚葉細胞が落ちくぼんで作られた小さな袋状の構造である。内面多数の感覚毛を生じていて,体が傾くと袋内の平衡石statolithがちがう部位の感覚毛に触れることになり,これによって体の姿勢を感知する。腔腸動物,扁形動物,紐(ひも)形動物,環形動物,節足動物,軟体動物,棘皮(きよくひ)動物,原索動物などでは一部の動物群によく発達しているが,その形態や作られている部位は動物群によってさまざまである。軟クラゲ類では,縁膜の基部に作られた簡単な小穴状のくぼみで,たいていは口が閉じており,平衡石は平衡胞の細胞から分泌される。硬クラゲ類では,触手のあるものが内部に平衡石を作るとともに短い振子状に変形し,周りの表皮がそれを取り囲んで突出して鈴状になることもあり,この変形した触手が周辺の表皮に生じた感覚毛に触れて,傾きを感知する平衡器官となっている。ハチクラゲ類の縁弁器官rhopaliumの内部にもこれとよく似た構造の平衡器官が備えられており,これらも機構,機能が類似しているところから,広義に平衡胞と呼ばれることもある。クシクラゲ類では,口と反対側の傘の頂上からくぼんだ1個の深い穴で,その内部に4束の感覚毛に支えられて分泌された平衡石がある。ウズムシ類では,頭端の表皮下に閉じた袋となって1個あり,しばしば脳に接している。ヒモムシ類では,脳の中へ入り込んだ1対の平衡胞をもつものがある。多毛類でも,体前部の1ないし数個の体節に各1対の平衡胞をもつものがあり,細い管状部で体外に通じていることもある。軟体動物ではヒザラガイ類を除いて他のすべての群にみられ,足部神経節域にあって対をなしている。巻貝類,二枚貝類では簡単な袋状であるが,イカ・タコ類では目の後下方の固い軟骨性の膜囊の中に,神経,血管によって垂れ下げられており,内部には平衡石を保持する部域と3直交面方向に突出した稜突起のある部域とをもつ複雑な構造になっていて,体の傾きだけでなく,角度の変化や運動をも感知できる。甲殻類のうち,十脚類の平衡胞は第1触角柄部基節の基部の上面にあり,口がせばまった殻のくぼみで,平衡石は脱皮のたびに取り込まれる砂粒である。アミ類では最後腹肢内肢基部,端脚類では頭部,等脚類では尾節に,閉じた囊状の平衡胞がある。ホヤ類では,オタマジャクシ幼生期に脳室内に軟クラゲ類の平衡器官に類似した平衡胞が形成されるが,成体にはない。平衡胞は一般に浮遊生活,遊泳生活をする無脊椎動物でよく発達し,底生生活をするものでは接触感覚による定位が発達している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「平衡胞」の意味・わかりやすい解説

平衡胞【へいこうほう】

平衡嚢,聴胞とも。無脊椎動物の平衡器官。内壁に感覚毛(平衡毛)のある小嚢で,中に1個または多数の平衡石がある。動物体の傾きに応じて平衡石が異なる部分の感覚毛に触れるため体の位置を知覚できる。クラゲ,渦虫類,軟体動物の幼生とある種の成体,節足動物のアミ類とエビ・カニ類,およびホヤ類の幼生などにみられる。
→関連項目平衡器官

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「平衡胞」の意味・わかりやすい解説

平衡胞
へいこうほう
statocyst

無脊椎動物の平衡器官。甲殻類では触角の基部にあり,その内面には一群の感覚細胞があって,それから生じた感覚毛がそなわっている。通常胞内には分泌された1個の平衡石または外界から取入れられた数個の砂粒がある。動物の体が傾斜したとき,平衡石または砂粒が感覚毛に触れ,それがひずみを受けることによって感覚細胞が興奮しインパルスが発生する。特にイセエビの平衡胞の機能については生理学的によく調べられている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の平衡胞の言及

【平衡感覚】より

…平衡器はヒトを含む脊椎動物では内耳の前庭迷路器官にあり,頭部の静的位置をおもに検出する前庭囊と,動的位置変化にともなう加速度を検出する半規管とからなっている(三半規管)。前庭囊は耳石器ともよばれ,無脊椎動物の平衡胞と共通の構造,機能をもつ。半規管は一つの基部からたがいに直交する3平面上にある3個の半円弧の環(円口類では1~2個)を派生した管状の器官で,それぞれの管の一端に瓶とよぶ膨大部があり,その内腔に有毛受容細胞の繊毛がゼリー状の物質に包まれてできた扇状のクプラが管軸と直角に立っている。…

※「平衡胞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android