平忠盛(読み)たいらのただもり

精選版 日本国語大辞典 「平忠盛」の意味・読み・例文・類語

たいら‐の‐ただもり【平忠盛】

平安末期の武将。正盛の子。清盛の父。白河院の寵を得て、延暦寺衆徒の強訴を退け、山陽南海の海賊を討つなど功をあげ、鳥羽上皇の時、内昇殿を許された。また、日宋貿易に尽力し平氏繁栄の基をつくった。歌人としても知られる。永長元~仁平三年(一〇九六‐一一五三

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デジタル大辞泉 「平忠盛」の意味・読み・例文・類語

たいら‐の‐ただもり〔たひら‐〕【平忠盛】

[1096~1153]平安末期の武将。正盛の子。清盛の父。白河鳥羽上皇の信任が厚く、検非違使けびいしから刑部ぎょうぶに累進、内昇殿を許された。日宋貿易により財力を得、公家的素養もあって平氏の宮廷における地歩を築いた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「平忠盛」の意味・わかりやすい解説

平忠盛
たいらのただもり
(1096―1153)

平安末期の武将。平正盛(まさもり)の長男。清盛の父。白河(しらかわ)・鳥羽(とば)両院政のもとで軍事力の中心になって活躍した。1113年(永久1)に18歳で盗賊を追捕(ついぶ)して従(じゅ)五位下、左衛門尉(さえもんのじょう)になったのをはじめ、29年(大治4)に山陽・南海両道の、35年(保延1)には西海(さいかい)の海賊追討使に任命されて鎮圧するなど、武名を高めた。また、白河・鳥羽法皇の寵(ちょう)を得て、越前(えちぜん)、伊勢(いせ)、河内(かわち)、備前(びぜん)、美作(みまさか)、播磨(はりま)、但馬(たじま)などの国守を歴任する間に、西国地方の武士と主従関係を形成して勢力を拡大し、経済力を築いた。院庁(いんのちょう)にも進出して院領荘園(しょうえん)の支配にも腕を振るい、九州の神崎荘(かんざきのしょう)(佐賀県神埼(かんざき)市)で日宋(にっそう)貿易を行ったりした。そうした経済力を背景に、32年(長承1)鳥羽法皇のために得長寿院(とくちょうじゅいん)を造進し、その功によって内裏(だいり)での昇殿を許され、やがて刑部卿(ぎょうぶきょう)にまで進んだ。しかし、忠盛の経済的隆盛と急激な昇進は貴族層の反感も招き、忠盛が斜視であったため「伊勢の瓶子(へいし)(平氏)は酢甕(すがめ)(眇(すがめ))なり」と嘲弄(ちょうろう)されたり、殿上で豊明節会(とよのあかりのせちえ)の夜に闇(やみ)討ちされかけて反対に忠盛が威圧したという話などが残っている。仁平(にんぺい)3年正月15日、58歳で没したとき、左大臣藤原頼長(よりなが)は、「数国の吏を経、富巨万を累(かさ)ね、奴僕(ぬぼく)国に満ち、武威人にすぐ」と評し、そのひととなりは慎み深く奢侈(しゃし)な行いはなかったと、その死を悼んでいる。平氏繁栄の基礎を着実に築き上げた一生であった。歌才もあり『平忠盛朝臣(あそん)集』などがある。

[田中文英]

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改訂新版 世界大百科事典 「平忠盛」の意味・わかりやすい解説

平忠盛 (たいらのただもり)
生没年:1096-1153(永長1-仁平3)

平安末期の廷臣。讃岐守正盛の子。父についで白河上皇の寵を得,検非違使(けびいし),伯耆守,越前守,備前守を歴任。1123年(保安4)源為義とともに延暦寺衆徒の強訴をしりぞけ,29年(大治4)には山陽・南海両道の海賊を追捕。白河上皇が没すると引き続き鳥羽上皇の近臣として活躍。32年(長承1)得長寿院造進の功により内昇殿(うちのしようでん)を許される。翌年鳥羽院領肥前神崎荘の預所(あずかりどころ)の立場を利用して日宋貿易に関与。35年(保延1)再び追討使として山陽・南海の海賊を追捕,忠盛の家人にあらざる者を賊と号して都に連行したという。39年南都の衆徒の入京を阻止。47年(久安3)祇園社神人と嫡子清盛の従者の闘乱事件により,延暦寺僧徒から流罪に処すべしと訴えられる。この間備前守,美作守,尾張守,播磨守を経て,内蔵頭となり正四位上に叙される。鳥羽院御厩別当(みやまべつとう)を務め,48年鳥羽院執事(年預)別当となり,翌年美福門院の執事(年預)別当を兼ねた。51年(仁平1)刑部卿に任ぜられる。武力,財力以外にも和歌など宮廷の教養を身につけ,平氏の地位を高めた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「平忠盛」の意味・わかりやすい解説

平忠盛
たいらのただもり

[生]永長1(1096)
[没]仁平3(1153).1.15.
平安時代末期の武将。正盛の子,清盛の父。永久1 (1113) 年強盗を捕えた功で一躍従五位下に叙せられた。同年の永久の強訴にも父とともに活躍。大治4 (29) 年備前守であった忠盛は,山陽,南海道の海賊追捕を行なった。彼を任用した白河法皇が同年に没し,鳥羽上皇が院政を開始すると正四位下に叙せられ,武名と財力 (国守歴任,および宋との貿易による富) とを背景に,院と密接な関係を結んで昇殿を望んだ。長承1 (32) 年得長寿院造営の賞として待望の内裏昇殿が許され,平氏政権の基盤を築いた。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「平忠盛」の解説

平忠盛
たいらのただもり

1096~1153.1.15

平安後期の武将。正盛の嫡子。清盛の父。白河上皇に近侍し,院に昇殿。1108年(天仁元)左衛門少尉,検非違使(けびいし),ついで伯耆守などの受領(ずりょう)を歴任。29年(大治4)山陽・南海両道の海賊追捕に活躍。白河上皇没後は,鳥羽上皇の近臣となり,院別当として35年(保延元)には再び海賊追捕にあたる。この間,各地の受領などを歴任し,正四位上刑部卿。のち院領肥前国神埼荘の預所(あずかりどころ)として日宋貿易に関与。私家集「平忠盛集」。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「平忠盛」の解説

平忠盛 たいらの-ただもり

1096-1153 平安時代後期の武将。
永長元年生まれ。平正盛の子。平清盛の父。白河・鳥羽(とば)両上皇につかえる。長承元年得長寿院をつくった功により内昇殿をゆるされた。また山陽・南海両道の海賊を鎮圧,日宋(にっそう)貿易にも関係して平家繁栄の基礎をきずいた。歌人としても知られ,家集に「平忠盛集」がある。仁平(にんびょう)3年1月15日死去。58歳。

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旺文社日本史事典 三訂版 「平忠盛」の解説

平忠盛
たいらのただもり

1096〜1153
平安後期の武将
正盛の長男。清盛の父。白河・鳥羽両上皇に北面の武士・院近臣として仕えて信任され,累進して検非違使 (けびいし) ・播磨守・伊勢守などを歴任。1129年に瀬戸内海の海賊を追捕した功により但馬守・刑部卿となって昇殿を許された。その後も海賊・僧兵の鎮圧で武名をあげ,日宋貿易などで伊勢平家繁栄の基礎を築いた。

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百科事典マイペディア 「平忠盛」の意味・わかりやすい解説

平忠盛【たいらのただもり】

平安末期の廷臣。正盛の子。清盛の父。白河・鳥羽両上皇の寵(ちょう)を得て累進,1129年・1135年に山陽・南海両道の海賊を討って西国に平氏勢力の基礎を築いた。内昇殿(うちのしょうでん)を許され,のち刑部卿(ぎょうぶきょう)に任ぜられた。

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世界大百科事典(旧版)内の平忠盛の言及

【伊勢国】より

…旧国名。勢州。現在の三重県東部。
【古代】
 東海道に属する大国(《延喜式》)。国名は,〈伊勢国風土記〉逸文に,伊勢津彦が国土を献じ,風を起こし波に乗って東方に去ったので,神武天皇の命により国神の名をとって命名したという説話がある。〈神風の〉という伊勢の枕詞もこれによる。国府は現,鈴鹿市国府町にあった。桑名,員弁(いなべ),朝明(あさけ),三重,鈴鹿,河曲(かわわ),奄芸(あむぎ∥あんへ),安濃,壱志(いちし),飯高,多気(たけ),飯野,度会(わたらい)の13郡を管する。…

【桓武平氏】より

…賜姓平氏のうち桓武天皇の皇子・皇孫に系譜をもつものの称(図)。桓武平氏に葛原(かつらはら)親王流・万多(まんだ)親王流・仲野親王流・賀陽(かや)親王流などがあり,さらに葛原親王流も高棟(たかむね)王流と高望(たかもち)王流とに分かれる。しかし,一般にはこれらの諸流のうちとくに高望王流の平氏を桓武平氏という場合が多い。
[東国の諸平氏]
 葛原親王の子高見王(高棟王の弟)の子が高望王で,彼は889年(寛平1)8月に平姓を与えられ,上総介になったことから,その子孫が東国地方に繁衍(はんえん)する基が開かれた。…

【殿上闇討】より

…平物(ひらもの)。平忠盛は,鳥羽院の念願にこたえて得長寿院を造立した功により,36歳で初めて昇殿を許された。殿上人(てんじようびと)たちがそれを不快に思い,五節(ごせち)の豊明節会(とよのあかりのせちえ)のおりに忠盛を闇討ちにしようと計画した。…

※「平忠盛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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