平均課税(読み)へいきんかぜい

改訂新版 世界大百科事典 「平均課税」の意味・わかりやすい解説

平均課税 (へいきんかぜい)

変動所得および臨時所得について所得税や住民税の負担を軽減するための特別の税額計算方法(所得税法90条,地方税法36条,314条の4)。現在の累進税率のもとでは,たとえば,ある年の課税所得金額350万円,翌年の課税所得金額50万円の人と,ある年の課税所得金額200万円,翌年の課税所得金額200万円の人とでは,2年間の課税所得金額の合計が同じ400万円でも,所得税や住民税の負担に相当のひらきがでてくる。そこで年々の所得の格差が大きい人は安定的な所得を得ている人に比べて税負担が重くなるので,特別な税額計算方法によって税負担を軽くすることが認められている。

 平均所得が適用されるのは,漁獲のり採取による所得,原稿料,作曲料,著作権使用料のように年々の変動の著しい変動所得と,野球選手や芸能人が専属契約を結んだときに得る契約金,不動産などを長期間貸し付けたときに得る権利金や頭金,業務を休廃止したときの補償金のように臨時に発生する臨時所得の二つである。平均課税の対象とされる範囲は,臨時所得についてはその全額,変動所得については前2年の変動所得の平均額を超える額であり,この二つの合計額(これを平均課税対象額という)が課税総所得金額の20%以上である場合に,平均課税の選択が認められる。調整の方法は,課税総所得金額から平均課税対象額の5分の4に相当する金額を控除した金額(これを調整所得金額という)を課税総所得金額とみなして計算した金額と,課税総所得金額から調整所得金額を控除した金額(平均課税対象額の5分の4)に調整所得金額に対する上記の税額の割合をかけて計算した金額をそれぞれ算出して,両者を合計したものがその年の税額となる。計算の方法はやや複雑であるが,以上の計算により変動所得と臨時所得は5年間にわたって平均化され,課税されることになる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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