常世の国(読み)トコヨノクニ

デジタル大辞泉 「常世の国」の意味・読み・例文・類語

とこよ‐の‐くに【常世の国】

[連語]
死者の行く永遠の世界黄泉よみの国。
古代、海のかなたにあると考えられた不老不死の国。

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精選版 日本国語大辞典 「常世の国」の意味・読み・例文・類語

とこよ【常世】 の 国(くに)

① 古代人が、海のむこうのきわめて遠い所にあると考えていた想像上の国。現実の世とはあらゆる点で異なる地と考えた国で、後に、不老不死の理想郷神仙境とも考えられた国。常世。
書紀(720)雄略二二年七月(前田本訓)「是に浦嶋の子、感(たけ)りて婦とす。相逐(あひしたか)ひて海に入る。蓬莱山(トコヨノクニ)に到りて、仙衆(ひしり)を歴(めく)り覩(み)る」
[補注]「日葡辞書」には誤解による記述として、「Tocoyono(トコヨノ) cuni(クニ)。すなわち、ニホン。〈訳〉日本。詩歌語」とある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「常世の国」の意味・わかりやすい解説

常世の国
とこよのくに

古代人の考えていた常住不変の国で,海のかなたにあると考えられていた。『日本書紀』雄略紀 22年には蓬莱山を「とこよのくに」と読ませている。丹波国の浦嶋子が「とこよのくに」にいたったとある。垂仁紀 23年には,「神風の伊勢国は常世の浪の重浪 (しきなみ) 帰 (よ) する国なり」とあり,『常陸国風土記』には「古の人の常世の国といふは,蓋し疑はくは此の地ならむか」とある。『古事記』にはスクナヒコナノミコトが常世の国に渡ったことがみえている。古代人は常世の国と現世との間には往来の道が開けていると信じていたらしい。常世の国は不老不死の国で,人間に長寿を授けるために常世神が来訪するものと考えられていた。垂仁天皇は田道間守 (たじまもり) に命じて常世国につかわし非時香菓 (ときじくのかくのこのみ。橘) を求めた。常世国はまた死後の世界すなわち黄泉国 (よみのくに) のこととも解された。沖縄ではニライカナイがこれにあたる。

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