帯電防止(読み)タイデンボウシ(英語表記)antistatic finish

デジタル大辞泉 「帯電防止」の意味・読み・例文・類語

たいでん‐ぼうし〔‐バウシ〕【帯電防止】

静電気を帯びないようにすること。絶縁性の高い物質摩擦などにより帯電しやすいため、これを防ぐ加工がなされる。→帯電防止剤

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改訂新版 世界大百科事典 「帯電防止」の意味・わかりやすい解説

帯電防止 (たいでんぼうし)
antistatic finish

静電気の帯電を防ぐこと。吸湿性に乏しい合成繊維プラスチックは電気絶縁性が高く(体積固有抵抗1011~1017Ωcm),摩擦などで静電気を発生しやすく,一度帯電するとその静電気はなかなか逃げない。冬季の乾燥した場所では天然繊維や紙でも帯電することがある。帯電するといろいろな問題が発生する。たとえば,紡績工程で繊維が帯電すると機械に付着し,糸をつくることが困難となり,またプラスチックフィルムなどでは成形加工や巻取りが困難となる。衣服が帯電すると,ほこりが付着しやすくなったり,布がまつわりつくようになり,着たり脱いだりするときに音や火花をともなって放電する。爆発性ガスの充満した場所では放電は危険である。カーペットの上を靴で歩いていると静電気が発生,蓄積し,ドアの金属取っ手に触れたときなどに放電して人体にかなりのショックを与えることも日常経験する。これを防止するには,表面電気抵抗を1010Ωcm以下,好ましくは106Ωcm以下にすればよい。帯電防止法としては,発生する静電気が蓄積しないで速やかに漏洩(ろうえい)するように,親水性,導電性の帯電防止剤を,合成繊維(紡糸時)や樹脂(加工前)に添加(練込み)したり,製品表面に塗布あるいはスプレーによって付着させる方法がとられる。繊維の場合には,このほか,金属めっきをした繊維やその他の導電性繊維を混ぜることによっても帯電防止効果が得られる。

帯電防止の目的に用いられる物質の多くは界面活性剤で,一般に表に示すような化合物が使われている。樹脂との相溶性,耐熱性,持続性を考慮して選択され,また当然ながら用途によって毒性,危険性の高いものは排除される。通常,樹脂100重量部に対し0.5~2.0重量部が加えられる。一般にノニオン系(非イオン系)のものは耐熱性がよく,樹脂との相溶性がよい。カチオン系のものは帯電防止能が優れ,耐熱性は悪いが,電子写真用などの特別の用途にも用いられる。繊維用にも各種のものが用いられるが,一例をあげると,ポリエステル繊維用にはポリエチレングリコールポリエチレンテレフタレートとの共重縮合物などがある。家庭で手軽に使える繊維用やレコード用のスプレー式のものもあるが,繊維に使用した場合の耐洗濯性は乏しい。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「帯電防止」の意味・わかりやすい解説

帯電防止
たいでんぼうし
antistatics

合成繊維は疎水性のものが多く,紡糸,織布などの工程中だけでなく,製品化したあとまで,摩擦により静電気を帯電しやすく,加工上の障害のほか,製品を着脱するとき,放電によって人体にショックを与える。この静電気発生を防ぐために,帯電防止加工を行う。帯電防止剤には,おもに界面活性剤が使用される。合成繊維用としてはカチオン活性剤,非イオン活性剤,また再成セルロース系化学繊維用には,アニオン活性剤が有効である。なお,これらは表面加工が主体で耐久性に欠けるので,導電性材料を混入する方式も採用されている。

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