市川小団次(4世)(読み)いちかわこだんじ[よんせい]

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「市川小団次(4世)」の意味・わかりやすい解説

市川小団次(4世)
いちかわこだんじ[よんせい]

[生]文化9(1812)
[没]慶応2(1866).5.8.
歌舞伎俳優。屋号高島屋。江戸市村座火縄売りの子として生れ,7世市川団十郎門下で京坂で修業し,「七変化」の宙乗りや立回りなどで名を高める。弘化4 (1847) 年江戸へ帰り怪談物の早替りなどで人気を集めた。安政1 (54) 年以降は,作者河竹黙阿弥と提携して,江戸生世話狂言において関西長所を巧みに取入れた音楽的演出と写実的芸風新生面を開いた。

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世界大百科事典(旧版)内の市川小団次(4世)の言及

【歌舞伎】より

… 猿若町時代の歌舞伎を代表するのが河竹黙阿弥である。彼は上方から下った世話物の名優4世市川小団次と提携し,音楽劇的に情緒豊かな,その一面に写実を徹底的に推し進めた多くの作品を作った。《蔦紅葉宇都谷峠(つたもみじうつのやとうげ)》《鼠小紋東君新形(ねずみこもんはるのしんがた)》《三人吉三廓初買》《勧善懲悪覗機関(かんぜんちようあくのぞきがらくり)》など,現代にも〈黙阿弥物〉の名で名作として伝わる数多くの世話物を精力的に書きつづけた。…

【河竹黙阿弥】より

…この期には団十郎のための《難有御江戸景清(ありがたやめぐみのかげきよ)》(1850),柳下亭種員の合巻を脚色した《児雷也豪傑譚話》(1852)などがある。 第2期は54年(安政1)から66年(慶応2)までの10余年間で,名人といわれた幕末の代表的役者4世市川小団次と組み,生世話狂言とくに白浪物に本領を発揮,地位を確立した時代。その契機は《都鳥廓白浪》(1854)で,以下《蔦紅葉宇都谷峠》(1856),《網模様灯籠菊桐》(1857),《小袖曾我薊色縫(あざみのいろぬい)》(1859),《三人吉三廓初買》(1860),《八幡祭小望月賑(よみやのにぎわい)》(1860),《勧善懲悪覗機関(かんぜんちようあくのぞきがらくり)》(1862),《曾我綉俠御所染(そがもようたてしのごしよぞめ)》(1864),《船打込橋間白浪(ふねへうちこむはしまのしらなみ)》(1866)などを小団次のために書いた。…

【勧善懲悪覗機関】より

…別名題《村井長庵巧破傘(むらいちようあんたくみのやれがさ)》,通称《村井長庵》。幕末の名作者河竹黙阿弥が,当時の名優4世市川小団次のために書きおろした作品。小団次は,義弟を殺し,妹を人手にかけさせる極悪非道な町医者村井長庵と,神田の質屋伊勢屋の手代で実直な善人久八の二役をつとめ,大当りをとった。…

【座頭】より

…座頭役者の子が親の名跡(みようせき)を継ぎ,あるいは高弟が師匠の名跡を継いで,座頭となる場合が多かった。それだけに,下級の役者から出世して,実力だけで座頭の地位につくのは至難の業で,初世中村仲蔵,4世市川小団次らは,その稀有な例。立女方(たておやま)を指して〈女方の座頭〉と呼ぶことはあった(《三座例遺志(さざれいし)》)が,原則として女方は一座の座頭にはならなかった。…

【白浪物】より

…これを歌舞伎にとりこんだのが河竹黙阿弥である。黙阿弥は提携した4世市川小団次の柄(がら)や芸風に合わせて,1854年(安政1)の《都鳥廓白浪(みやこどりながれのしらなみ)》をはじめ《鼠小紋東君新形(ねずみこもんはるのしんがた)》《網模様灯籠菊桐(あみもようとうろのきくきり)》《小袖曾我薊色縫(こそでそがあざみのいろぬい)》《三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)》《勧善懲悪覗機関(かんぜんちようあくのぞきがらくり)》《船打込橋間白浪(ふねへうちこむはしまのしらなみ)》など,傑作・佳作を続々と書いて白浪作者の異名を得,小団次も白浪役者と呼ばれた。13世市村羽左衛門(のちの5世尾上菊五郎)のために黙阿弥が書いた《青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)》もある。…

【鼠小紋東君新形】より

…1857年(安政4)1月江戸市村座初演。配役は鼠小僧次郎吉こと稲葉幸蔵を4世市川小団次,幸蔵養母お熊・早瀬弥十郎・次郎太夫を坂東亀蔵,与之助を河原崎権十郎(のちの9世市川団十郎),お高・松山・若草を4世尾上菊五郎,新助・伊之助を5世坂東彦三郎,与惣兵衛を2世浅尾与六,蜆売り三吉を13世市村羽左衛門(のちの5世尾上菊五郎)など。1832年(天保3)に処刑された鼠小僧の実説をふまえた2世松林(しようりん)伯円の講談をもとに脚色された。…

【八幡祭小望月賑】より

…1860年(万延1)7月江戸市村座初演。配役は縮売越後新助・小天狗正作を4世市川小団次,赤間源左衛門・念仏六兵衛を3世関三十郎,芸者美代吉を岩井粂三郎(のちの8世半四郎),穂積新三郎を河原崎権十郎(のちの9世市川団十郎),白滝の佐吉を13世市村羽左衛門(のちの5世尾上菊五郎)など。1807年(文化4),深川の八幡祭の際,人出の多さに永代橋が落ちた事件と,18年(文政1)本郷の呉服屋甚之助が深川芸者おみのを殺した事件をヒントに,小千谷から毎年江戸へ縮(ちぢみ)を売りにくる越後商人を小団次の柄にはめ,初演は世界を〈切られ与三〉にして脚色。…

【都鳥廓白浪】より

…1854年(嘉永7)3月江戸河原崎座初演。配役は忍ぶの惣太を4世市川小団次,花子実は松若を坂東しうか,吉田梅若を沢村由次郎(のちの3世沢村田之助)。謡曲《隅田川》の梅若伝説をふまえたお家世話狂言。…

※「市川小団次(4世)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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