差控(読み)さしひかえ

精選版 日本国語大辞典 「差控」の意味・読み・例文・類語

さし‐ひかえ ‥ひかへ【差控】

〘名〙
江戸時代武士公家などが出仕を禁じられ自宅に謹慎させられること。自己の過失親族家臣などの犯罪に関連して行なわれる。
※禁令考‐後集・第一・巻八・延享四年(1747)「家来徒士足軽中間等致不届、公儀御仕置に成候共、其主人差控に不及候」
② 一般に、謹慎すること。
御触書寛保集成‐四三・宝永六年(1709)二月「一父親類等え御預差扣させ置候類」
相場で、時のくるのをまって、売買ひかえること。〔新時代用語辞典(1930)〕

さし‐ひか・える ‥ひかへる【差控】

[1] 〘自ア下一(ハ下一)〙 さしひか・ふ 〘自ハ下二〙 (「さし」は接頭語) ひかえる。そばにいる。
[2] 〘他ア下一(ハ下一)〙 さしひか・ふ 〘他ハ下二〙 (「さし」は接頭語) 程度分量などをひかえめにする。悪い結果を招かないよう、当面それをしないようにする。遠慮する。辞退する。やめる。
狂歌・大団(1703)四「黒はよし白はあしきとさしひかへ是や碁ばんの目薬にこそ」
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一〇「此辺の事情を察して主人も少々怒るのを差し控へてやったら、八っちゃんの寿命少しは延びるだらうに」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「差控」の意味・わかりやすい解説

差控 (さしひかえ)

江戸時代,武士や公家に科せられた制裁勤仕より離れ,自家に引きこもって謹慎する。門を閉ざすが,潜門(くぐりもん)から目だたないように出入りはできた。比較的軽い刑罰ないし懲戒処分として,職務上の失策をとがめたり,あるいは親族・家臣の犯罪に縁坐・連坐せしめる場合などに用いた。自発的にも行われ,親族中一定範囲の者または家臣が処罰を受けると,その刑種によっては差控伺(うかがい)を上司に提出し,慎んで指示を待った。
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