精選版 日本国語大辞典 「差出」の意味・読み・例文・類語
さし‐だし【差出】
〘名〙
[一] 下位の者から上位の者へ提出すること。
② 江戸時代、幕府直轄地の代官が、御取箇帳(年貢収納帳)をはじめ、勤方帳、村鑑帳など諸帳面、諸伺書を勘定奉行所へ提出すること。
※牧民金鑑‐二・諸伺書・文化一一年(1814)七月一二日「都而御殿御勘定所え御差出有之候諸書付其外等」
③ 江戸時代、他支配・他領の人民を相手取って奉行所に訴え出るとき、原告の属する代官、寺社、領主へ出願して、まず受訴奉行所へその訴訟を進達してもらう手続。また、その際受訴奉行所へ提出された訴訟の要旨を簡単に記した紙片。〔政普集‐乾(古事類苑・法律五六)〕
④ 江戸時代、領主、地頭、代官などが、自分の手元で裁判できない犯人、その他事件関係者を、幕府の命により口書(くちがき)、証拠書類など一件書類を添えて、幕府の管轄奉行所へ引渡すこと。〔評定所留役勘定勤方(江戸中か)〕
[二] 前方へ差し出すこと。
① 手に持った物を前へさし出すこと。
※評判記・難野郎古たたみ(1666頃)花崎龍左衛門「ことにあふぎのさし出しきやうなる所あり」
② 母屋(もや)からさしかけに張り出した店。
※滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)下「芝居の人、手に指出しをもって」
さし‐だ・す【差出】
〘他サ五(四)〙 (「さし」は接頭語)
※古活字本毛詩抄(17C前)一三「匡と云かたみをさしたいて、其でうけとるぞ」
② 提出する。さしあげる。引き渡す。さしいだす。〔羅葡日辞書(1595)〕
③ 遣わす。派遣する。
④ 郵便物などを送り出す。
さし‐いだ・す【差出】
〘他サ四〙 (「さし」は接頭語)
① =さしだす(差出)①
※古事記(712)上「其の鏡を指出(さしいだ)して、天照大御神に示(み)せ奉る時」
② =さしだす(差出)②
※夜の寝覚(1045‐68頃)二「しばらく、いちじるくさしいださじ。まづそこのもとにと思ふを、さる心せよ」
③ 棹をさして舟を漕ぎ出す。
※後撰(951‐953頃)恋二・六五一「鳴門よりさしいだされし舟よりも我ぞよるべもなき心ちせし〈藤原滋幹〉」
さし‐で【差出】
〘名〙
① 手を差し出すように、陸地が水上に突き出ていること。
② でしゃばりであること。また、でしゃばって言うことば。
※日葡辞書(1603‐04)「Saxideuo(サシデヲ) ユウ」
※歌舞伎・色一座梅椿(1812)四幕「この三太丁稚が差出(サシデ)をしたと」
③ でしゃばりな人。さしでもの。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※浄瑠璃・妹背山婦女庭訓(1771)三「向後そちが受領には口松の差出の頭佐平次と」
さし‐いで【差出】
〘名〙
① 出すぎること。さしでがましいこと。でしゃばり。
※枕(10C終)二八「すべてさしいでは、わらはもおとなもいとにくし」
② 出ること。出仕すること。
※苔の衣(1271頃)二「此ほどと成てはさしいでもはかばかしくもし給はで」
さん‐だ・す【差出】
〘他サ五(四)〙 「さしだす(差出)」の変化した語。
※評判記・役者評判蚰蜒(1674)藤田小平次「見いだしたるまなこにかどをたててひとねぢねぢたるいきとをりには、おんまけ、さんだせ、あんだ見ったくない」
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