巨細胞(読み)キョサイボウ(英語表記)giant cell

デジタル大辞泉 「巨細胞」の意味・読み・例文・類語

きょ‐さいぼう〔‐サイバウ〕【巨細胞】

豊富な原形質の中に1個または数十個のが存在する、大型の細胞複数の細胞が融合したものと、核だけが分裂して生じるものとがある。また、巨核球破骨細胞など生理的なものと、さまざまな病気に伴って出現するものがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「巨細胞」の意味・わかりやすい解説

巨細胞 (きょさいぼう)
giant cell

単に形が大きいだけの細胞を指すのではなくて,一つの細胞の中に2個以上の核をもつ多核の細胞をいう。核の数は40個にも達することがあり,1個あたりの細胞の倍数性は高い。多核巨細胞multinuclear giant cellともいう。正常にみられるものには,骨髄巨核球,破骨細胞,損傷修復時の横紋筋細胞などがある。病的なものには,ウイルス感染をうけた細胞にみられる細胞融合ヘルペスウイルス麻疹ウイルスセンダイウイルスなど)によるもの,腫瘍に現れるもの(骨の巨細胞腫ホジキン病のリード=スターンバーグ巨細胞,甲状腺や肺の巨細胞癌,脳腫瘍),炎症に随伴してみられるマクロファージの融合によるもの(異物肉芽腫に現れる異物型巨細胞,結核症などの類上皮細胞肉芽腫のラングハンス型巨細胞,黄色腫のトウトン型巨細胞)などが挙げられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「巨細胞」の意味・わかりやすい解説

巨細胞
きょさいぼう

原形質が豊富で巨大な細胞体をもつ細胞をいう。多くは炎症性の肉芽組織や腫瘍(しゅよう)組織の中に出現する。巨細胞の核は1個の場合もあるが、一般には多核である。この場合、単核細胞が合体して多核細胞になる場合と、核のみが分裂増数して多核細胞となる場合の2種類の方式がある。正常組織では骨髄中の破骨細胞が直径100マイクロメートルにも達する巨細胞となるが、これは、核も50個ほどになる多核巨細胞である。この場合は単核細胞の合体によっている。また、結合組織性細胞の一つとして、食作用を営む大食細胞があるが、この細胞は外来性の異物に出会うと互いに癒合して100個以上の核をもつ異物巨大細胞となる。なお、炎症時に出現する巨細胞の働きには不明な点が多い。

[嶋井和世]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「巨細胞」の意味・わかりやすい解説

巨細胞
きょさいぼう
giant cell

直径 30~80μmの大きい細胞で,炎症の際に組織反応で生じるものと,腫瘍組織に生じるものとがある。前者には,結核の肉芽腫に出現するラングハンス巨細胞,異物肉芽腫に出現する異物型巨細胞,黄色細胞肉芽腫のトウトン型細胞などがある。ウイルス感染症では巨細胞形成が特徴であり,真菌症の肉芽腫にも巨細胞が出現する。脈なし病や側頭動脈炎では,血管弾性線維が破壊されて異物型巨細胞が出現するので,側頭動脈炎は巨細胞性動脈炎ともいわれる。腫瘍では,破骨細胞由来の骨腫瘍は巨細胞腫といわれ,多核巨細胞が多数出現する。また,悪性腫瘍には巨細胞が多数出現するものがあり,巨細胞癌,巨細胞肉腫などといわれる。

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栄養・生化学辞典 「巨細胞」の解説

巨細胞

 巨大な細胞の通称

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