精選版 日本国語大辞典 「左」の意味・読み・例文・類語
ひだり【左】
さ【左】
ひだん【左】
ひだり‐・する【左】
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インド・ヨーロッパ語では、一般に右にあたることばは強、吉、正という意味を含み、左にあたることばは弱、不吉、邪という意味も含んでいる。たとえば英語、ドイツ語、フランス語も、右を表す語はすべて強、正、善を意味するし、左をさす語は弱、邪、悪につながる。ラテン語のdexterも右という意味のほかに強とか幸運を意味し、左をさすsinisterは不吉をも意味する。これは不吉を意味する英語のsinisterやフランス語のsinistreの語源でもある。古代ギリシア語のδεξιςは右および幸運を意味し、ριζτερςやενυμοςおよびσκαιςは左とともに不吉も意味する。また右と左は象徴的に男性と女性に関連しており、そして尚右の思想は古代ギリシアに一貫してみられる。
右を尊ぶ観念は、ギリシアに限らず、世界中に広くみられる。インドネシアにおいては一般に食事をするときは右手を用い、排泄(はいせつ)など不浄な目的には左手を使う習慣がある。イスラム教の及んでいないインドネシア諸族にも同様な観念がある。たとえばバリ島においても右手を尊び、左手を不浄視する習慣がある。バリ島民は、呪術(じゅじゅつ)を「右の呪術」と「左の呪術」とに分け、「右の呪術」は病気治療のための呪術であり、「左の呪術」は人を病気にするための呪術であり、右を善、左を悪としている。
この種の研究を体系的に行った最初の学者はエルツである。彼は1909年の論文「右手の優越――宗教的両極性の研究」で、ポリネシアのマオリ、インドネシアのダヤクなどの民族の資料に基づき、人が右利きになるのは、生理的原因によるよりも社会的習慣によることを力説した。いっそう新しい調査資料を世界各地に求めて尚右の観念を二元的象徴体系との関連で推し進めたのはニーダムである。
尚右の観念はアフリカの南スーダンの牧畜民ヌエル(ヌアー)にもあり、バントゥー系のニョロにも、左右の象徴的対立がみられる。王の右手は現れているが、左手は肩から手首まで隠している。ところが女はこれと逆に右手を隠し、左手を現している。ニョロの社会で子供が誕生すると、父親は、子供が男の子の場合は戸口の右側に、女の子の場合は戸口の左側に穴を掘り、えな(後産)を埋める。右が男に、左が女に象徴的に結び付いていることが明らかである。ケニアの農耕民メルは、右手を尊ぶが、最高祭司は儀礼の際に左手を用い、この左手は神聖視されている。さらに、インドネシアのボルネオのンガジュ・ダヤクの社会では呪師は女装する。宗教的職能者が象徴的に左や女性に関連することは世界各地にみられる。
古代日本では「左」はだいじなものとされ、尚右の思想はなかったといわれる。大野晋(すすむ)の説では、「ひだり」の語源は「日の出の方(ヒダリ)」にあり、これは南を前面にした場合、東が左にあたるからではないかとする。ところが、現在とらえられる日本各地の俗信には、尚右の観念、左を嫌い、あるいは左が呪力をもつとする観念がみられる。たとえば、「左巻き」「左前」など悪い意味に用いられ、左縄とは、普通とは逆に左へ撚(よ)って綯(な)った縄のことで、不運を意味するとともに、魔物の撃退に用いられることもある。
[吉田禎吾]
『R・エルツ著、吉田禎吾・内藤莞爾・板橋作美訳『右手の優越』(1980・垣内出版)』▽『松永和人著『左手のシンボリズム』(1995・九州大学出版会)』
…一般的に言って,象徴は,精神を一つの課題に直面させ,探究的な思惟へと向かわせ,さらに思考をいわゆる一義的な記号の閉じた回路から解き放つと同時に,精神をある全体的なものに向かわせる働きをもつといえよう。 たとえば右手と左手。右手と左手の機能差は単なる生理的な事実でしかない。…
…右あるいは左を絶対的に定義することは不可能である。一般には例えば右を〈北を向いたとき東にあたる方〉とか〈東を向いたとき南にあたる方〉と定義するが,東を定義するのに〈北に向かって右〉とかいうふうに右,左を使わねばならないから,これは一種のトートロジーである。…
※「左」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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