州権(読み)しゅうけん(英語表記)state right

日本大百科全書(ニッポニカ) 「州権」の意味・わかりやすい解説

州権
しゅうけん
state right

連邦国家を構成する単位としての州が、憲法上有する固有の権利。厳密には、アメリカ合衆国を構成する各州の権利をさすが、ドイツなどの連邦国家を構成する支分国の権利も含めてよい。アメリカでは、もともと13の独立国(ステート)がそれぞれ固有の州憲法をもっていたが、のち合衆国憲法によって連邦を構成した。したがって、州は連邦に先行する存在であり、国家(ステート)として主権をもっていた。連邦が形成されると、主権は連邦に移譲され、各州の主権は州権に変わる。ただその場合でも、連邦の権限は、合衆国憲法に列挙された事項に限定されており、それ以外の領域は、明文をもって州に禁止されているものを除いて、すべて州あるいは人民に留保されている。連邦の権限と州権を比べると、南北戦争までは州権を重視する傾向が強かった。この時期には、州の権限をできるだけ広く解釈して、州による連邦法の無効宣言や州の連邦からの脱退を認める州権論が盛んであった。しかし20世紀に入ると、連邦権限の重要性が増し、とくに再度の世界大戦と大恐慌を契機として、連邦の権限は飛躍的に増大した。しかしこの間、州権もそれ自体としては拡大の一途をたどっている。福祉国家化は連邦の権限をさらに拡大する傾向をもつが、連邦レベルでは大きな政府の行き詰まりも明らかなため、最近では、連邦権限の一部を州権に戻そうとする試みも現れている。

阿部 齊]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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