川浸り(読み)カワビタリ

デジタル大辞泉 「川浸り」の意味・読み・例文・類語

かわ‐びたり〔かは‐〕【川浸り】

陰暦12月1日に行う水神祭。川の水に尻を浸し、また、もちをついて水神に供え、水難よけと豊漁を祈る。川浸りの朔日ついたち

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改訂新版 世界大百科事典 「川浸り」の意味・わかりやすい解説

川浸り (かわびたり)

12月1日のこと。〈川浸りの朔日(ついたち)〉とか一年最後の朔日という意味で〈乙子(おとご)の朔日〉ともいう。この日,餅やだんごをつくり川へ投げ入れる習慣は広く全国にわたっていた。これを〈川浸り餅〉〈川渡り餅〉などといい,河童に引き込まれないよう河童に与えてやるとか,これを食べると川でおぼれぬなどという。中国地方ではぼた餅を膝などに塗りつけると川で転ばぬといい,関東ではこの日の早朝,子どもが川にしりをつけると河童にさらわれないと伝えており,水難を防ごうとする意識がうかがわれる。餅やだんごのほか,小豆,粥,ナス漬などを食べる土地もあるが,本来これらは水神への供物であったと考えられる。ちょうど半年おいた6月1日の行事(氷の朔日)に類似する点が多く,水神との関係が強調されるが,農業暦の上でさほど重要な時期ではないことから,正月を迎えるに先だち,川で水垢離(みずごり)をとったことに由来するという説もある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「川浸り」の意味・わかりやすい解説

川浸り
かわびたり

地方によって,カワワタリ,カビタリ,カワバイリ,カワトビなどともいう。 12月1日,餅や団子,粥,豆腐などを川に供えて水神を祀る年中行事で,6月の水神祭と対置的な行事である。この餅 (あるいは団子など) を食べると河童に引かれないとか,水難を免れるとか,虫歯にならないなどという信仰がある。また,朝早く人に見られないように川に行って尻を水につけてくるとか,牛馬を川へ連れていって洗うとかいう地方もあるところから,水辺での (みそぎ) が変形したものとも考えられる。この餅や団子を,思案餅,首絞め団子などと呼ぶ地方があるのは,12月が奉公人の出替りの時期で,奉公人がこれを食べて奉公先へ出たところから起ったもの。

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