島田清次郎(読み)しまだせいじろう

精選版 日本国語大辞典 「島田清次郎」の意味・読み・例文・類語

しまだ‐せいじろう【島田清次郎】

小説家石川県出身。金沢商業中退。放浪生活ののち、二〇歳で長編小説地上」第一部を刊行。社会矛盾恋愛の不条理を描いて異常な反響を呼び、第二部から第四部まで発表したが、精神を病み、巣鴨保養院に入院して死亡。明治三二~昭和五年(一八九九‐一九三〇

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デジタル大辞泉 「島田清次郎」の意味・読み・例文・類語

しまだ‐せいじろう〔‐セイジラウ〕【島田清次郎】

[1899~1930]小説家。石川の生まれ。大正8年(1919)に刊行した長編小説「地上」がベストセラーとなったが、精神を病み療養中に病死した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「島田清次郎」の意味・わかりやすい解説

島田清次郎
しまだせいじろう
(1899―1930)

小説家。石川県の生まれ。旧制金沢二中、金沢商業学校中退。放浪生活のなかから小説『地を超ゆる』(1917)を執筆歌人で評論家の暁烏敏(あけがらすはや)の紹介で公表され、京都『中外日報』記者となる。1918年(大正7)『地上』第一部を脱稿、翌年生田長江(いくたちょうこう)の推挙で新潮社から刊行された。天才肌の主人公が社会に反抗し、恋愛する姿を描き、理想主義的な青年共感を得て、異常な売れ行きを示す。しかし、続刊された第二部、第三部では概念的になり、未完に終わる。22年欧州旅行後は奇矯言動が目だち、不遇のうちに精神科病院で没した。ほかに短編集『大望』(1920)、評論集『勝利を前にして』(1922)がある。

[山田俊治]

『『地上――地に潜むもの』(1973・季節社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「島田清次郎」の意味・わかりやすい解説

島田清次郎 (しまだせいじろう)
生没年:1899-1930(明治32-昭和5)

小説家。石川県美川町生れ。回漕業を営んでいた生家の没落により金沢へ移り,県立金沢二中,明治学院普通部を転々としたのち,県立金沢商業を中退。1919年ひそかに書き上げた小説《地上》第1部を新潮社から出版したところ,年少の天才として世評を呼び,一躍流行作家となった。引き続き第2部(1920),第3部(1921),第4部(1922)が出版されたが,その内容は巻を追って低下し,名声も衰えた。《地上》第1部は,彼が少年時代を過ごした母の実家(貸座敷業)での見聞を描いたもので,売春婦の悲惨な生活と,彼女たちに寄せる主人公の少年の人道主義的な同情が,若い世代の共感を呼んだが,一方,名声の高まるにつれて,作者自身の実生活における傲慢な言動が,周囲の反感を買い,しだいに支持者を失った。23年4月,婦女暴行事件によって社会的非難を受け,まもなく早発性痴呆(早発性認知症)という診断のもとに西巣鴨の保養院に入院,その後文学活動を続けることなく没した。
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百科事典マイペディア 「島田清次郎」の意味・わかりやすい解説

島田清次郎【しまだせいじろう】

小説家。石川県生れ。金沢商業中退。生家の没落のため転退学を繰り返す。1919年半自伝的小説《地上》第1部を生田長江の推薦で刊行。徳富蘇峰堺利彦らに激賞され,ベストセラーとなる。第4部まで刊行し(未完),一時は文壇の寵児となったが,1923年婦女暴行事件を起こして失墜。翌年〈早発生痴呆〉という診断で精神病院に入院し,そこで没した。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「島田清次郎」の解説

島田清次郎 しまだ-せいじろう

1899-1930 大正時代の小説家。
明治32年2月26日生まれ。大正8年生田長江(いくた-ちょうこう)の推薦で出版された「地上」(第1部)が大ベストセラーになり,わかき天才と称された。11年の欧州旅行後は精神をやみ,療養中の昭和5年4月29日死去。32歳。石川県出身。金沢商業中退。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「島田清次郎」の意味・わかりやすい解説

島田清次郎
しまだせいじろう

[生]1899.2.26. 石川,美川
[没]1930.4.29. 東京
小説家。生田長江の推薦で 1919年『地上』を発表。これは貧しい青年の野望が世の不正,悪徳を小気味よく弾劾していく物語で,異常な反響を呼んで第4部 (1922) まで書き継がれたが,作者の死により未完に終った。

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