日本大百科全書(ニッポニカ) 「島本久恵」の意味・わかりやすい解説
島本久恵
しまもとひさえ
(1893―1985)
小説家。大阪生まれ。13歳で父と死別、母の片腕となって家計を助けながら文学を志し、『女子文壇』に詩歌を投稿、その編集者河井酔茗(すいめい)に認められ、1913年(大正2)上京、『婦人之友』社の記者となり、23年酔茗と一家を構えた。24年処女小説『失明』を発表。30年(昭和5)酔茗に協力して『女性時代』を創刊し、同誌に33年から、祖母・母・自身の3代の伝記と酔茗周辺の詩人群像を描き出した自伝的大長編小説『長流』の連載を始めた(1961完結)。同年第一小説集『鱗片記(りんぺんき)』を刊行。酔茗没後は詩誌『塔影』を主宰。評伝『明治の女性たち』(1966。芸術選奨受賞)、『明治詩人伝』(1966~67)、小説『貴族』上下(1973)などがある。
[橋詰静子]
『『明治の女性たち』(1966・みすず書房)』▽『古川清彦「河井酔茗評伝」(『日本文学研究』所収・1951.5・誠和書院)』