岩手郷(読み)いわでごう

日本歴史地名大系 「岩手郷」の解説

岩手郷
いわでごう

笛吹川の中流右岸に比定される中世の郷。岩出とも書く。「塩山抜隊和尚語録」に「甲州岩出県」とみえ、同県居住の匡心居士が和泉国の大雄禅寺で抜隊の師孤峰覚明のもとで修行している。匡心の出自は不明だが、戦国時代には武田信昌の子縄美が当郷を領して岩手氏を称した。縄美は油川信恵にくみして信虎に滅ぼされるが、同氏は縄美の子信盛が継承し、永禄五年(一五六二)には信盛しんじよう院を創建、九貫九〇〇文余を寄進している(同年三月二八日「岩手信盛寺領証文」信盛院文書)。元亀二年(一五七一)四月一日、当郷で家九間を免許された岩手能登守は信盛のことで(「武田家印判状」上野直正氏所蔵文書)、右衛門大夫を称した信盛の嫡子信景は、天正九年(一五八一)三月一四日に信盛院に一〇貫一〇〇文の地を寄進し(「岩手信景寄進手形」信盛院文書)、天正壬午起請文にも武田御親類衆として岩手助九郎がみえるなど領主としての立場を保持するが、武田氏滅亡後の天正一〇年八月二一日には岩手入道が徳川氏から当郷で二〇〇貫文の地を安堵され(「徳川家印判状写」譜牒余録)、その後は徳川家康に仕えて当郷を離れ子孫は幕臣となった。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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