岩手[県](読み)いわて

百科事典マイペディア 「岩手[県]」の意味・わかりやすい解説

岩手[県]【いわて】

東北地方の太平洋に面する県。県庁所在地は盛岡市。1万5275.01km2。133万147人(2010)。北海道を除き都府県中最も広く,人口密度は北海道に次いで小さい。〔沿革〕 かつての陸奥(むつ)国の一部で,平安時代には坂上田村麻呂胆沢(いさわ)城を築いて蝦夷(えぞ)地開拓の拠点となった。のち安倍氏が勢力を得たが,前九年・後三年の役後奥州藤原氏が興って,いわゆる平泉文化を築いた。鎌倉〜江戸時代を通じて南部藩領であったが,1868年陸中国となり,廃藩置県で盛岡・江刺・一関3県に分かれ,1876年に現在の岩手県となった。〔自然〕 西に秋田県境をなす奥羽山脈南北に連なり,これと重なって那須火山帯の八幡平(はちまんたい),岩手山,駒ヶ岳栗駒山などの火山があり,各地に温泉がわく。その東は北上川沖積低地北上盆地)で県の中枢地域をなす。県の中・東部の大半は北上高地によって占められる。太平洋岸(三陸海岸)の北部は高い海岸段丘が続くが,南部はリアス式の複雑な海岸である。気温は同緯度の秋田県より低く,特に内陸部は低温冷涼である。北東風の〈やませ〉や夏季の冷温,北部海岸に多いガス発生などで,古来冷害に悩まされた。降雪量は秋田県より少ない。〔産業〕 産業別人口構成は第1次13.7%,第2次25.9%,第3次60.1%(2005)。山林が多く,耕地は全面積の10%にすぎない。水田は北上盆地に集中し,北上高地北部ではキャベツ,リンゴの栽培が顕著である。県南部では葉タバコ栽培が盛ん。かつて南部駒の産地であったが,岩手山麓,北上高地の岩泉遠野などで酪農,肉牛肥育,ブロイラー飼育が普及している。かつて北上高地を中心に薪炭を多産したが,現在はパルプ・チップの生産が伸びている。三陸の好漁場をひかえ久慈,宮古,釜石良港が発達,水産加工も活発である。釜石の鉄,松尾の硫黄などの鉱産はいずれも閉山,釜石の製鉄も高炉停止。1982年東北新幹線が盛岡まで,同年東北自動車道が県北部の安代(あしろ)まで開通した。首都圏への時間距離が短縮されて北上市,盛岡市などの北上川筋へ工業団地の造成が進められ,電気,機械,精密機械などの企業が誘致された。伝統産業に近世以来の南部鉄器岩谷堂箪笥などの工芸品がある。陸中海岸・十和田八幡平の2国立公園,早池峰(はやちね),栗駒の2国定公園に属する景勝地や,平泉中尊寺毛越寺(もうつうじ)のほか各地の温泉,高原が観光地としてにぎわい,民俗芸能も多く伝わる。〔交通〕 東北本線が盛岡まで通じ,東北新幹線,三陸鉄道,東北自動車道,八戸自動車道,国道4号線が縦断,大船渡(おおふなと)線,釜石線,山田線,北上線,花輪線などが東西にのび,1997年春には秋田新幹線(田沢湖線)が開通。 2011年3月,東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生,太平洋沿岸部を中心に県内各地で激しい揺れと巨大な津波により甚大な被害が出る。
→関連項目東北地方わんこそば

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

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