(読み)とどく

精選版 日本国語大辞典 「届」の意味・読み・例文・類語

とど・く【届】

[1] 〘自カ五(四)〙
① さし出したものが先方に着く。こちらから送った物が向こうに着く。
※発心集(1216頃か)五「京のたよりごとに文をやれど、とどかずさはりがちにて返事も見ず」
② あるところにまで達する。及ぶ。
滑稽本浮世風呂(1809‐13)二「天(てんぢょこ)へとどきさうな天窓(あたま)アして」
③ こちらの心が先方に通じる。転じて、反応が現われる。目的を達する。成功する。
※玉塵抄(1563)四「使にやったこともとどかぬにならうず」
人情本・春色梅児誉美(1832‐33)四「丹次郎どのへ、見継心にいたした義も、大かたとどきましたる様子」
④ 注意や調査などが十分にゆきわたる。行きとどく。間に合う。
※清原宣賢式目抄(1534)端書「助律令とは律令にととかぬ処を、格にしるし明にするを助と云也」
真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉一九「新吉の届かねえ処は、年もいかねえから勘弁して」
⑤ はげむ。
サントスの御作業(1591)一「ツヨキ ココロヲ モッテ タシカニ コラエ todoqu(トドク)ベシト ヲンイサメナサレ」
[2] 〘他カ下二〙 ⇒とどける(届)

とど・ける【届】

〘他カ下一〙 とど・く 〘他カ下二〙
品物などを先方に持って行く。相手の所に着くようにする。
※義経記(室町中か)七「願はくは、送護法迎護法となりて、奥州まで相違なくとどけ給へとぞ祈りける」
② 注意して聞いて、受け入れる。聞きとどける。承知する。また、約束などを果たす。
※玉塵抄(1563)四六「女が顧が云ことをきいてととけたぞ」
日葡辞書(1603‐04)「ヤクソクヲ todoquru(トドクル)〈訳〉約束を実行する」
③ 最後までやり通す。
※京大二十冊本毛詩抄(1535頃)一「始終をととくるは賢人ぞ」
※日葡辞書(1603‐04)「ゴヲキテヲ タモチ todoquru(トドクル)〈訳〉この掟を固く守り続ける」
役所学校会社上司などに申し出る。届けを出す。
※仮名草子・浮世物語(1665頃)一「公義御諚なり。〈略〉ひらに止め給へ。それさもなくは、町中として届(トド)け侍べらん」

とどけ【届】

〘名〙 (動詞「とどける(届)」の連用形の名詞化)
① 役所・学校・会社の上司などに届け出ること。また、その書類。届書。
浮世草子・新色五巻書(1698)五「それぞれに預けとどけ厳しく」
※雁(1911‐13)〈森鴎外〉四「爺さんは戸籍がどうなってゐるやら、どんな届(トドケ)がしてあるやら」
② 謝礼、または義理などで贈り物をすること。また、その贈り物。
※浄瑠璃・淀鯉出世滝徳(1709頃)上「新七めが口故に、揚屋のとどけも無沙汰になり」
③ 苦しいことを我慢し通すこと。〔日葡辞書(1603‐04)〕

とず・く とづく【届】

[1] 〘自カ四〙 =とどく(届)(一)
※書紀(720)持統四年一〇月(北野本訓)「衣粮(きもの)無きに縁りて、達(トツク)こと能はざることを憂ふ」
※俳諧・犬子集(1633)二「天下にとつくはながき日足かな〈望一〉」
[2] 〘他カ下二〙 =とどける(届)
※謡曲・柏崎(1430頃)「形見をとづくる音づれは」
[語誌]「とどく」の古形。一般に、トヅクからトドクへの交替は室町時代の中期以後であるといわれている。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「届」の意味・読み・例文・類語

とどけ【届(け)】

先方に届けること。「届け物」「つけ届け
学校・役所・会社の上役などに届け出ること。また、その書類。届け書。「欠席の届けを出す」「出生届け
[類語]申告届け出申し出申し入れ願書

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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