(読み)キョ

デジタル大辞泉 「居」の意味・読み・例文・類語

きょ【居】[漢字項目]

[音]キョ(漢) コ(呉) [訓]いる おる おく
学習漢字]5年
〈キョ〉
腰を落ち着けて住む。住む所。「居住居所居留隠居家居閑居寓居ぐうきょ皇居雑居住居新居蟄居ちっきょ転居同居別居
腰を下ろす。すわる。「起居蹲居そんきょ
普段の様子。つね。「居常
いながら。じっとして何もしないさま。「居然
〈コ〉家にいる。「居士
〈い〉「居候居間雲居芝居鳥居仲居長居
[名のり]い・おき・おり・さや・すえ・やす・より
[難読]一言居士いちげんこじ夏安居げあんご円居まどい団居まどい

きょ【居】

住まい。住居。「を構える」
[類語]うち家屋屋舎おくしゃ住宅住家じゅうか住居家宅私宅居宅自宅住まい住みかねぐら宿やどハウス(尊敬)お宅尊宅尊堂高堂貴宅(謙譲)拙宅弊宅陋宅ろうたく陋居陋屋ろうおく寓居ぐうきょ

い〔ゐ〕【居】

《動詞「い(居)る」の連用形から》
居ること。そこにあること。「間」「場所」「なが
座ること。座っていること。「立ち振る舞い」

う【居/×坐】

[動ワ上二]《動詞「ゐ(居)る」(上一)の古形で終止形だけが残存するが、上二段活用と考えられる》すわる。いる。
「たまきはる我が山の上に立つ霞立つともとも君がまにまに」〈・一九一二

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精選版 日本国語大辞典 「居」の意味・読み・例文・類語

いる ゐる【居】

〘自ア上一(ワ上一)〙 動く物がある場所にとどまって存在する。また、低い状態になる。
[一] 人や動物の場合。
① ある場所に存在する。
※書紀(720)武烈即位前・歌謡「琴がみに 来(き)謂屡(ヰル)影媛(かげひめ) 玉ならば 吾(あ)が欲(ほ)る玉の 鰒白珠(あはびしらたま)
※天草本平家(1592)二「ミヤコ ニ y(イ) マラスル ナラバ、マタ ウキメ ヲモ ミョウズレバ」
② 低い姿勢をとる。腰をおろす。すわる。⇔立つ
※万葉(8C後)一七・四〇〇三「立ちて為(ヰ)て 見れどもあやし」
※竹取(9C末‐10C初)「立つもはしたゐるもはしたにてゐ給へり」
③ (鳥、虫など飛ぶものが)ある物にじっとつかまる。とまる。
古事記(712)中・歌謡「かぐはし 花橘は 上枝(ほつえ)は 鳥韋(ヰ)枯らし 下枝(しづえ)は 人取り枯らし」
徒然草(1331頃)一〇「鳶(とび)ゐさせじとて縄をはられたりけるを」
④ ある地位につく。
※落窪(10C後)四「御女(むすめ)の女御、后にゐ給ひぬ」
⑤ ある場所に居を定める。住む。また、外出しないで家にとどまる。在宅する。
※源氏(1001‐14頃)蜻蛉「京になんあやしき所にこのころ来てゐたりける」
⑥ ある種類の人間が、抽象的な意味で存在する。ある。
寒山拾得(1916)〈森鴎外〉「別に道に親密な人がゐるやうに思って、それを尊敬する人がある」
⑦ ある人にとって、親族・上司・部下などの社会的関係のもとで、ある人が存在する。
※茶話(1915‐30)〈薄田泣菫〉十三年目「自分には子供が居(ヰ)無いので」
[二] 植物や無生物の場合。
① (かすみ、雲、ちりなど動くことのあるものが)動かないである。ある物の上にとまって存在する。⇔立つ
※万葉(8C後)一二・三一二六「纏向(まきむく)の病足(あなし)の山に雲居(ゐ)つつ雨は降れどもぬれつつそ来し」
② (舟などが)砂について動かないである。停泊する。泊まる。
※万葉(8C後)一二・三二〇三「みさご居る渚(す)に居(ゐる)舟の漕ぎ出なばうら恋しけむ後は会ひぬとも」
③ (水草、氷などが)平らに生じる。
※枕(10C終)一七八「池などある所も水草(みくさ)ゐ」
※千載(1187)冬・四四二「つららゐてみがける影の見ゆる哉まことにいまや玉川の水〈崇徳院〉」
④ (ふくらみのあったものが)平らになる。
※土左(935頃)承平五年一月一五日「たてばたつゐればまたゐる吹く風と波とは思ふどちにやあるらん」
⑤ (「腹が居る」の形で) 怒りがおさまる。しずまる。→癒(い)る
※平家(13C前)九「梶原この詞に腹がゐて」
浄瑠璃菅原伝授手習鑑(1746)二「苦痛させねば腹がゐぬ」
⑥ (「腹を居る」の形で他動詞のように用い) 怒りをしずめる。
※咄本・醒睡笑(1628)一「兵庫で足を黒犬にくらはれたる、無念の腹を居んとて蹴た」
[三] 補助動詞として用いられる。
(イ) (動詞の連用形、または、それに助詞「て」を添えた形に付いて) 動作、作用、状態の継続、進行を表わす。
※平家(13C前)一二「和泉国八木郷といふ所に逗留してこそゐたりけれ」
※徒然草(1331頃)三二「物のかくれよりしばし見ゐたるに」
(ロ) (「…ずにいる」「…んでいる」「…ないでいる」の形で) ある動作、作用が行なわれない状態の継続を表わす。
洒落本・中洲の花美(1789)小通の登楼「丹次ばかり馬道に残って何ンにもせずにいるのさ」
[語誌](1)上代には、「ゐる」に当たる終止形に「う」があったと考えられる。→「う(坐)」の語誌。
(2)近世には、次のように「をり(をる)」と同じような活用をさせた例がある。「もししったきゃくがゐらば、をしうりせんと」〔洒落本・傾城買四十八手‐見ぬかれた手〕
(3)補助動詞の場合、近世上方語では主語有情物の場合は「ている」、非情物の場合は「てある」が付く傾向が強い。一方、近世後期以降の江戸語では主語の有情・非情にかかわらず「ている」が付き、「てある」はもっぱら他動詞に付けられるようになり、現在に至っている。

お・る をる【居】

〘自ラ五(四)〙 を・り 〘自ラ変〙
[一] ある場所を占めている状態をいう。
① そこにある。場所を占めて存在する。
(イ) 人の場合。自己を卑下したり、他人をさげすんだりする気持の含まれることが多い。
※古事記(712)中・歌謡「忍坂(おさか)大室屋に 人さはに 来入り袁理(ヲリ) 人さはに 入り袁理(ヲリ)とも」
※枕(10C終)二五「つとめてになりて、ひまなくをりつる者ども、ひとりふたりすべりいでて往(い)ぬ」
(ロ) 動物の場合。
※万葉(8C後)八・一四三一「百済野(くだらの)の萩の古枝に春待つと居(をり)しうぐひす鳴きにけむかも」
(ハ) 無生物の場合。
※万葉(8C後)一九・四二〇九「谷近く 家は乎礼(ヲレ)ども 木高くて 里はあれども ほととぎす 未だ来鳴かず」
② 腰をおろす。すわる。
※万葉(8C後)五・九〇四「白玉の 吾が子古日は 明星(あかぼし)の あくる朝(あした)は しきたへの 床の辺去らず 立てれども 居礼(をレ)ども 共に戯れ」
③ そのままの状態でいる。そこにとどまっている。居を定める。
※万葉(8C後)一一・二六六七「真袖もち床打ち払ひ君待つと居(をり)し間に月傾きぬ」
[二] 補助動詞として用いられる。動作、作用、状態の継続、進行を表わす。
(イ) 動詞の連用形に付く。多く、自分の言動を卑下したり、他人の言動をさげすんだり、または、軽視できるものの作用、状態について表現したりするときに用いられる。
※万葉(8C後)一五・三七四二「会はむ日をその日と知らず常闇(とこやみ)にいづれの日まで吾(あれ)恋ひ乎良(ヲラ)む」
※歌舞伎・夕霧七年忌(1684)「私も隣の京屋に居(ゐ)をります」
(ロ) 動詞の連用形に付く。
(イ) より進んで、動作主をいやしめ、ののしる気持を強く含めて用いられる。…やがる。
※虎清本狂言・鏡男(室町末‐近世初)「はらをたておって、わらはにかぶりつくやうにしおるはなふ」
(ハ) 動詞の連用形に、助詞「て(で)」を添えた形に付く。
※成簣堂本論語抄(1475頃)信「二人のたがやしてをるところをとをる」
(ニ) ((二)(ハ)の形の下にさらに「ます」「まする」「まらする」を付けて) 相手にあらたまって言う場合に用いる。
※虎明本狂言・花子(室町末‐近世初)「命にはかへられずかやうに致ておりまらする」
[語誌](1)「ゐる」と「あり」との結合したもの。本来、「ゐる」はある場所にすわること、「あり」は継続存在することを意味する。平安時代に入ると、「ゐたり」「ゐたまへり」等の形式が現われ、九五〇年頃から後の和文資料では「をり」の、特に終止法の例が見られなくなる。
(2)自己については卑下、他人については軽視の気分を含み、(二)(ロ)の用法はそれが文法的に形式化したものと見られる。
(3)近代では、「をる」は「ゐる」に代わって、オラン、オッタカ、知ッテオル、ソコニオレなどのように、話者の尊大な気分を示すようになり、同時に「をります」が「ゐます」をいっそう丁寧にしたものとして用いられる。
(4)(二)(ハ)と形式的には同じ用法が既に中古に見られるが、まだはっきりとは補助動詞化していないと考えられる。

きょ‐・す【居】

〘自サ変〙
① 居所をかまえる。よりどころにする。また、住む。居る。
※神皇正統記(1339‐43)上「後漢書に『大倭(だいわ)王は耶麻堆(やまたい)に居す』」
② 地位にある。官職にある。また、与えられた状態に身を置いている。
※太平記(14C後)一二「大樹の位に居して、武備の守を全うせんこと、げにも朝家の為に人の嘲りを忘れたるに似たり」
③ うずくまる。平伏する。
※今昔(1120頃か)二三「黒ばみたる者の、弓箭帯したる二人出来て居(きょ)す」

きょ【居】

〘名〙
① 腰をおろすところ。すわる場所。
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉五「男女居(キョ)を同ふするは甚だ恠(あやし)むべしと」 〔史記‐五帝本紀〕
② すまい。すみか。住居。居所。
※海道記(1223頃)木瀬川より竹の下「其人常の生なし、其家常の居なし」
※菊枕(1953)〈松本清張〉一「一家は東京に居を構えた」 〔書経‐胤征〕

【居】

〘名〙 (動詞「いる(居)」の連用形の名詞化) 居ること。座ること。また、その座席。「家居」「里居」「長居」などのように、多くは他の語と熟して用いられる。
※能因本枕(10C終)四二「ゐもさだまらず、ここかしこに立ちさまよひあそびたるも」

こ‐・す【居】

〘自サ変〙 (「こ」は「居」の呉音) ある場所、地位、職などにいる。きょす。
※私聚百因縁集(1257)九「父子共に宅(いへ)に居(コ)して枕を並べて悲しみ臥せり」

お・り をり【居】

〘自ラ変〙 ⇒おる(居)

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