尿素回路(読み)ニョウソカイロ(英語表記)urea cycle

デジタル大辞泉 「尿素回路」の意味・読み・例文・類語

にょうそ‐かいろ〔ネウソクワイロ〕【尿素回路】

オルニチン回路

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精選版 日本国語大辞典 「尿素回路」の意味・読み・例文・類語

にょうそ‐かいろ ネウソクヮイロ【尿素回路】

〘名〙 肝臓内で尿素が生成されるときの反応機構。生体内からのアンモニア二酸化炭素除去に働く。

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改訂新版 世界大百科事典 「尿素回路」の意味・わかりやすい解説

尿素回路 (にょうそかいろ)
urea cycle

オルニチン回路ornithine cycleともいう。哺乳類などの生物が,体内で生成されたアンモニアと二酸化炭素を用いて尿素を生成する回路を指し,肝臓に存在する。イギリスのH.A.クレブスらが肝臓の切片を用いて尿素生成の実験を行っていた際に,オルニチンが尿素生成を促進することを見いだし,これをきっかけとして,以下のような尿素回路を解明した(1932)。(1)カルバモイルリン酸合成酵素作用で,アンモニアと二酸化炭素からまずカルバモイルリン酸が合成されるが,同時に2分子のATPが消費される。この反応は低濃度のN-アセチルグルタミンを要求する。(2)オルニチンとカルバモイルリン酸が転移酵素の作用で反応し,シトルリンが生成する。(3)シトルリンはアスパラギン酸と縮合してアルギノコハク酸を生成する。この反応はアルギノコハク酸合成酵素によって触媒され,ATP1分子が消費される。(4)アルギノコハク酸はアルギノコハク酸リアーゼの作用でアルギニンフマル酸分解する。(5)アルギナーゼの作用で尿素とオルニチンが生成する(図)。なお,微生物では,(1)の反応のかわりに(2)の反応,すなわちカルバミン酸キナーゼ反応が営まれ,また尿素は生成せずにアルギニン生成のところで停止する。植物では(2)の反応が営まれるが,尿素回路は完全に営まれる。こうして,尿素回路が1回転するごとに尿素1分子が生成する。全体として吸エルゴン反応である。ここで初発段階(1)の酵素のアセチルグルタミン酸による活性化は,一種アロステリック効果である。
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百科事典マイペディア 「尿素回路」の意味・わかりやすい解説

尿素回路【にょうそかいろ】

オルニチン回路とも。肝臓で尿素が生合成される一連の反応経路をいう。1932年クレブス,ヘンスライトが発見。反応は大きく3段階に分かれ,オルニチンにアンモニアと二酸化炭素が反応して,カルバモイルリン酸を経てシトルリンを形成。次にシトルリンはアスパラギン酸のアミノ基をとってアルギニンになり,さらにアルギナーゼの作用で尿素とオルニチンに加水分解される。結局ATPのエネルギーを消費して2分子のアンモニアより1分子の尿素を生成する。
→関連項目アスパラギン酸クレブスタンパク(蛋白)質尿素ビオチン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「尿素回路」の意味・わかりやすい解説

尿素回路
にょうそかいろ
urea cycle

クレブズ・ヘンゼライト回路,あるいはオルニチン回路ともいう。アミノ酸の分解によって作り出されるアンモニアを,毒性の低い尿素にするために機能する代謝サイクルをいう。尿素は肝臓で生成され,腎臓で排泄されるが,肝臓での尿素生成は,H.A.クレブズと K.ヘンゼライトによって 1932年に提唱された回路で行われる。すなわち,オルニチン,シトルリン,アルギニンの経路を経て二酸化炭素 ( CO2 ) とアンモニア ( NH3 ) が尿素に合成される。その後,カルバミルリン酸から始められ,またアルギノコハク酸が途中に関与することが確かめられて,エネルギー必要過程も明らかとなり,現在の回路が完成された。各酵素が遺伝的に欠損すると,いずれも尿素の合成が抑えられて高アンモニア血症が生じる。

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世界大百科事典(旧版)内の尿素回路の言及

【クレブス】より

…ゲッティンゲン大学卒業後,O.H.ワールブルクの門に入り,呼吸酵素を研究。フライブルク大学に移って(1932),哺乳類などで尿素回路(オルニチン回路)を明らかにした(1933)。これは酵素のサイクル反応によって,アンモニアが尿素として放出される過程である。…

※「尿素回路」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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