尾毛(読み)びもう(英語表記)cercus

改訂新版 世界大百科事典 「尾毛」の意味・わかりやすい解説

尾毛 (びもう)
cercus

昆虫の末端体節(第10または第11腹節)の背板に生じる1対の突起をいい,腹節付属肢の変形したもので,多くの成虫幼虫に見られる。バッタの尾毛は無節で短いが,コオロギ類のそれは長い。ゴキブリ類では多数の環節からなるものが多い。シミイシノミ類では長くて3本あり,カゲロウ類は2~3本で,体長よりも長い。ハサミムシ類の尾毛は変形して,無節で堅い尾鋏(びきよう)となる。尾毛の形態は群や種の分類学上の特徴になっている。また,感覚器官としての機能もあり,接触刺激をはじめ空気振動や低周波の音を感受する。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の尾毛の言及

【振動覚】より

…ゴキブリの膝下器官は振動数1~4kHzの振動にひじょうに敏感で,振幅10-9cm(1.5kHz)の振動に感じる。昆虫では直翅(ちよくし)類の尾毛も振動感覚器である。ミズスマシの触角のジョンストン器官は特殊な例で水面の振動の感覚器となっている。…

【聴覚】より

…羽毛状の触角が羽音のような低周波音に共鳴し,これが触角基部のジョンストン器官を刺激する。また,直翅類などの腹部末端にある尾葉の細長い毛すなわち尾毛は低周波音に応答する。例えばスズムシの尾毛は0.3~3kHzの音に応答する。…

※「尾毛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android