尺度分析(読み)しゃくどぶんせき(英語表記)scale analysis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「尺度分析」の意味・わかりやすい解説

尺度分析
しゃくどぶんせき
scale analysis

アメリカの社会心理学ガットマンLouis Guttman(1916―1987)によって提案された態度尺度構成法の一つ。ガットマン尺度Guttman's scaleをつくること、所与の尺度がガットマン尺度を構成しているか否かを検討すること、ガットマン尺度によって個人を相対的に順位づけること、が含まれる。今日ではあまり用いられることのない方法であるが、概念的、数理的には興味深いものがある。

 ガットマン尺度では、ある事象に対する態度を一連の質問項目によって測定するが、このとき、質問項目が一次元的に配列されているのが特徴である。たとえば、ある事象に関する意見が好意的なものから非好意的なものへと順に配列されているならば、ある質問に賛成した者は、その質問より後の、すなわち非好意的な質問には賛成するであろうし、ある質問に反対した者は、それより前の、すなわちより好意的な質問には反対であろう。この条件を満たす質問項目によって構成されるものが、スケーラブルscalableな尺度とよばれる。スケーラブルな尺度を作成するための技法を、スケーログラム分析scalogram analysisとよぶ。

 スケーラブルな尺度は、特殊な性質をもっている。第一に、個人の賛成した数がわかれば、各意見項目にどのように反応したかを知ることができる。第二に、態度に関するスケーラブルな尺度について、横軸に好意的なものから非好意的なものまでの質問項目の内容を、縦軸に態度の強さをとった平面上に各人を位置づけると、それらはU字型曲線を示す。つまり、極端に賛成または反対の態度を示す者は態度の強さが大であり、中立的な態度の者は態度の強さが小なのである。そしてガットマンは、極小点が態度のゼロ・ポイントであると考えた。この態度のゼロ・ポイントの発見方法は、強度分析intensity analysisといわれる。従来、世論調査などであるトピックについての態度を調べようとするとき、質問項目の微妙な言い回しが賛否割合に影響するという問題があったが、強度分析を用いれば、賛成グループと反対グループを弁別することができるわけである。

 ガットマン尺度においては、一次元的な構造をもつ事象の存在を明らかにすることを目的としていたが、複数の次元からなる事象の場合には、多次元尺度分析が必要となる。ガットマン自身もそうであったが、現在の尺度化の関心は、多次元尺度構成のための理論と技法へと移ってきているといえる。強度分析は、一次元的連続体成分に分解し、多次元分析への志向を含んだ方法であるといえる。

[原 純輔]

『高根芳雄著『多次元尺度法』(1980・東京大学出版会)』『猪股佐登留著『態度の心理学』(1982・培風館)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「尺度分析」の意味・わかりやすい解説

尺度分析
しゃくどぶんせき

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