小農(読み)ショウノウ

デジタル大辞泉 「小農」の意味・読み・例文・類語

しょう‐のう〔セウ‐〕【小農】

わずかな田畑を持ち、家族労働力だけで農業経営を行う小規模な農業。また、その農民。⇔大農

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精選版 日本国語大辞典 「小農」の意味・読み・例文・類語

しょう‐のう セウ‥【小農】

〘名〙 雇人を使わないで、自己(家族を含む)の労働力と自己所有の生産手段によって営む農業。また、その農民。日本の農民の多くはこれにあたる。
西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一「牛董(ニウトン)は、額蘭覃(グランタム)の小農の子にして」

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世界大百科事典(旧版)内の小農の言及

【寛文・延宝検地】より

…寛文~延宝期(1661‐81)に関東および畿内の天領を中心にして実施された検地。この検地のねらいは,近世初頭以来の農業生産力の発展を基礎にして自立した小農を,米納を基軸にした生産物年貢の負担者として領主が直接に掌握しようとするものであった。したがって幕藩体制社会の基本原理たる石高制を直接生産者のもとに貫徹させてゆく検地であった。…

【近世社会】より

…しかも通例封建時代と考えられる鎌倉,室町の時代とも区別する意味がこめられている。
[近世社会の特質]
 基本的特質は,農業生産の担い手が小農であり,その生産物の過半を武士である領主が年貢として受け取ることである。この関係をやや内容を含めて概括すると,次のようにいうことができる。…

【農業】より

… しかし,資本主義発展と農業のこのような発展,そこでの農民層の分化・分解の進行にもかかわらず,近代社会では各国ともほぼ共通の傾向として,農業は他産業とくに工業と比較して,発展が相対的に立ち遅れざるをえない。技術発達の側面については前述したが,社会経済的・経営的側面についてみても,農民層の分化・分解の一定の進行にもかかわらず,資本家的大規模経営は今日なお部分的・局部的にしか形成されておらず,零細規模の家族経営農業(小農)が多数残存して,それがむしろ農業,農民の支配的な形態となっている。イギリスやアメリカの一部を除いて,先進諸国でさえもそうであり,発展途上国においてはなおさらのことである。…

【藩政改革】より

…信濃国の譜代小藩諏訪藩におけるこの政策の実施過程に出された〈郷中申渡〉8ヵ条は,第3代藩主諏訪忠晴が1675年(延宝3)閏4月に出したもので,その冒頭の条に,藩が給所百姓を大名直轄の百姓に切り替えてゆく理由を明記している。すなわち,給人(きゆうにん)による百姓の恣意的支配の抑止であり,小農維持を基調におく藩政への転換を宣明したものであった。しかも,この転換は譜代小藩にとどまらず,前期の藩政改革の中心的な課題となっていた。…

【百姓】より

太閤検地以後,領主権力の指向するところは,高請(たかうけ)農民を百姓にとりたて,百姓を権力の基礎として掌握し,百姓から直接(作間(さくあい)の禁止),年貢・諸役を徴集することであった。しかし近世初期検地での高請農民中には,中世以来の系譜をひく有力農民もいれば,半隷属的小農民も含まれていた。このほかにも帳外(ちようはずれ)の隷属農民が多数存在していた。…

【百姓一揆】より

…年貢,諸役を負担する百姓身分の小農民が結集して,増徴と統制に反対する直訴(じきそ)を行うこと。一揆の歴史は中世,近世の両時代にまたがるものであり,その主体も武士,僧侶から百姓にわたっているが,近世の一揆は百姓一揆が中心である。…

【百姓伝記】より

…1~7巻は主として土壌,屋敷構え,樹木,農具と馬具,肥料,治水,8~15巻は苗代に関する歌100首,稲,麦,穀物,特用作物,野菜類,水生植物,救荒植物,日常使用する道具類を記述している。本書成立のころは小農の自立が進行していた時代であったので,小農の進むべき方向を多方面にわたり明らかにし,小農技術の体系化を試みた著述としての特色がある。農業技術的にみると,自給農業を維持するために,肥料のつくり方と施用法に特色があり,また水害の予見とその対策,国土の保全のための自然保護,種子の選び方,稲作偏重からの脱出として畑作物の栽培法,雑草を減少させる方法等について,今日からみてもすぐれた着眼がある。…

【夫役】より

…また上層農民が家父長制的な実力によって,あるいは村役人としての公認された特権によって村内の百姓を使役することも続いており,家族内にふくまれる下人的身分の下層民を使役することも広くみられた。 このような状況は,近世国家がめざす小農民の自立,百姓数の増大という目標を阻むものであった。隷属農民をかかえる百姓は自分に課せられた夫役を代行させて免れたが,夫婦の働きが経営を支える単婚小家族農民(小農)の場合,男手を欠くことは致命的であった。…

【奉公人】より

…彼らは家内奴隷的性格が強く,主家に人身的に隷属して終身奉公する。自給的穀作農業を営む主家の農業経営は,譜代下人の労働と,自立過程にある小農(被官,家持下人,隠居など)の提供する賦役(ふえき)とによって支えられていた。譜代下人の成因には,中世以来の主家への隷属を継承したものと,人身売買の結果として発生したものとがある。…

【村方騒動】より

…村方出入(でいり),小前(こまえ)騒動ともいう。江戸時代の村落は,前後の時代と比べると小農の比率が高く,比較的に均一な印象を与えるが,実際には上下の階層差が小さくなかった。村落の成員はほとんど百姓身分の農民だったが,初期には百姓以下の名子(なご),前地(まえち),被官(ひかん)などと呼ばれる隷属身分の下層農民がかなり存在した。…

【零細農】より

…農家を経営規模にしたがって階層に分ける場合,一般に〈富農〉〈中農〉〈小農〉に区分されるが,日本の農家経営について,〈小農〉よりさらに小規模なものについていう用語。自家農業だけで家族の生計を維持するだけの経営規模をもたず,保有する生産手段も貧弱で,劣悪な生産条件にあるものをさす。…

※「小農」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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