小説でよく使われる四字熟語

四字熟語を知る辞典 の解説

小説でよく使われる四字熟語

四字熟語にも、当然のことながら、よく使われるものと、そうでもないものとがあります。

 戦後作家八〇人の小説から、漢字が四字並んだ箇所を抜き出してみました。全体では一〇万を超える例が集まりました。その結果、一番多かったのは、どんなことばだと思いますか。

 小説だから、心理描写が多いに違いない。「以心伝心」「喜怒哀楽」といった四字熟語が多いのではないか。そんな予想も立ちますが、実際は違いました。

 一番多かったのは「自分自身」です。五〇〇を超える使用例がありました。小説は自分の気持ちや行動を書くことが多いからでしょう。繰り返し使う作家、ほとんど使わない作家の違いはありますが、大半の作家が使っています。

 もっとも、「自分自身」は、四字熟語としては平凡です。上位には、ほかにどんなことばが来ているでしょうか。

 二位以下を見ると、登場人物固有名詞が多く目につきます。あるいは、「新聞記者」「高等学校」といった熟語もあります。人や学校を指すことばは、四字熟語には入れにくい気がします。

 わりあい「四字熟語」らしいことばとしては、以下のものがありました。

 一〇〇例を超えるものとして、「一生懸命・日常生活・中途半端」。

 五〇例を超えるものとして、「行方不明・一所懸命・自分勝手・右往左往半信半疑」。

 これでわかるように、「おんしん」「めん」などの典型的な四字熟語は、かえって出てきません。そういうことばは、ここ一番というときに使うもので、頻度数はそんなに高くないのです。

 ちなみに、「以心伝心」「喜怒哀楽」は一〇例前後しかありませんでした。

 別の調査結果も紹介しましょう。

 本書に収録した大項目(イラストをつけて一ページ分を使ったもの)の中には、作家八〇人の作品でよく使われるもの、まったく使われないものがあります。

 よく使われることばは、「ぼうじゃくじん」の二四例に続き、「じょうめいれいぜんだいもんこうとうけい」など。

 一方、使われないことばは、「でんそうでんへきかいそうせきちんりゅうへんさんぜつもんぜんじゃくじゅんじょう」など。

 たしかにマイナーな顔ぶれなのですが、成り立ちの面白いことばも多く、本書ではあえて詳述しました。

出典 四字熟語を知る辞典四字熟語を知る辞典について 情報

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