小紫(読み)こむらさき

精選版 日本国語大辞典 「小紫」の意味・読み・例文・類語

こ‐むらさき【小紫】

[1] 〘名〙
クマツヅラ科の落葉低木。本州以西の日本各地および台湾、中国大陸、朝鮮半島に分布し、山野湿地に生える。高さ一~一・五メートル。全体に細毛をまばらに生じ、枝は紫色を帯びる。葉は短柄をもち対生、長さ三~六センチメートルの倒卵状長楕円形で、上半部は縁にあらい鋸歯(きょし)がある。初夏、葉の付着点よりやや上から短い花柄を出し、小さな淡紫色の花を密集してつける。果実は径約三ミリメートルの球形で紫色に熟す。こしきぶ。こむらさきしきぶ。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕
② (小紫蝶) タテハチョウ科の中型のチョウ。はねの開張約七センチメートル。はねの表面は黒褐色で、外縁に黄褐色の斑紋があり、雄の前ばねは光線の具合で紫色に輝く。ヤナギ類やコナラなどの樹液に集まり、雄は水や動物の排出物によく集まる。幼虫はヤナギの葉を食べ、樹幹に糸を張って越冬。離島を除く日本各地に分布。国外ではユーラシア大陸北部に広く分布する。〔日本昆虫学(1898)〕
[2] 明暦(一六五五‐五八)ごろの江戸吉原三浦屋の遊女強盗を働いて刑死した情夫白井権八のあとを追って自殺した。浄瑠璃歌舞伎などに脚色された。浄瑠璃「驪山比翼塚(めぐろひよくづか)」「其小唄夢廓(そのこうたゆめもよしわら)」など。

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デジタル大辞泉 「小紫」の意味・読み・例文・類語

こむらさき【小紫】

江戸初期の江戸吉原三浦屋の遊女。刑死した愛人平井白井権八のあとを追って自殺。浄瑠璃や歌舞伎などに脚色。生没年未詳。→白井権八

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「小紫」の解説

小紫 こむらさき

?-? 江戸時代前期の遊女。
江戸吉原(よしわら)三浦屋の抱え。延宝7年(1679)愛人の平井権八(ごんぱち)が辻斬りなどの罪で死罪となったあとをおい,墓前で自害した。この話は幡随院(ばんずいいん)長兵衛と関連づけられ,「驪山(めぐろ)比翼塚」などの浄瑠璃(じょうるり),歌舞伎の素材となった。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「小紫」の解説

小紫 (コムラサキ)

植物。クマツズラ科の落葉低木。コムラサキシキブの別称

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世界大百科事典(旧版)内の小紫の言及

【権八小紫物】より

…歌舞伎狂言の一系統。鳥取藩士平井権八は本庄助太夫を殺して江戸へ逃げ,強盗殺人を犯して自首し,1679年(延宝7)11月3日処刑され,愛人である吉原三浦屋の遊女小紫がその墓前で自害した。以上,目黒に残る比翼塚の由来による。…

※「小紫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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