小林英夫(読み)こばやしひでお

日本大百科全書(ニッポニカ) 「小林英夫」の意味・わかりやすい解説

小林英夫
こばやしひでお
(1903―1978)

言語学者。構造言語学の祖として言語学史上画期的な位置を占めるソシュール『一般言語学講義』(1916)を、同書がまださほど注目を浴びていない1928年(昭和3)に、その世界最初の翻訳として邦訳(当時の訳書名は『言語学原論』)。また、イェルムスレウ『一般文法の原理』(1928)の「批判的解説」をつとに1932年に著すなど、ヨーロッパの研究を日本に的確に紹介するとともに、自身も言語学とくに文体論などに多くの著述を残した。ノルウェーの国民詩人ビョルンソンの小説『アルネ』の翻訳もある。またオペラの翻訳にも活躍。東京帝国大学言語学科選科修了。京城(けいじょう)帝国大学・東京工業大学・名古屋大学・早稲田(わせだ)大学の各教授、国語審議会委員などを務めた。

[菊地康人 2018年10月19日]

『『小林英夫著作集』全10巻(1975~1977・みすず書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「小林英夫」の意味・わかりやすい解説

小林英夫
こばやしひでお

[生]1903.1.5. 東京
[没]1978.10.5. 東京
言語学者。 1922年法政大学卒業,23~27年東京帝国大学言語学科に学ぶ。ソシュールの"Cours de linguistique générale" (1916) を世界で初めて翻訳し,28年『言語学原論』として出版 (改版『一般言語学講義』,72) 。 29~46年京城帝国大学 (現ソウル大学) で言語学を教え,第2次世界大戦後は早稲田大学,東京工業大学教授を歴任。 67年日本ロマンス語学会創立。 C.バイイ,L.イェルムスレウ,K.フォスラーらの主著やオペラなどの翻訳をはじめ,文体論,文体美学を興して芥川龍之介島崎藤村,志賀直哉らの作品分析に応用した。『小林英夫著作集』 (10巻,75~77) がある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「小林英夫」の解説

小林英夫 こばやし-ひでお

1903-1978 昭和時代の言語学者。
明治36年1月5日生まれ。昭和3年ソシュールの構造言語学を「言語学原論」として世界にさきがけて翻訳する。とくに文体論に関心よせ,「文体論の建設」「文体論の美学的基礎づけ」などの著作をのこした。京城帝大,早大,東京工業大,名大の教授を歴任。昭和53年10月5日死去。75歳。東京出身。東京帝大卒。

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