小札(読み)こさつ

精選版 日本国語大辞典 「小札」の意味・読み・例文・類語

こ‐さつ【小札】

〘名〙 (「こざつ」とも) 低額紙幣のこと。江戸時代から明治初期にあっては銀札では一匁札未満の銀五分、三分、二分札など、金札では一両未満の二分、一分、二朱、一朱札のことをいい、明治四年(一八七一)以後新通貨単位施行後は一円未満の五〇銭以下のものをいう。近代では「小額紙幣」の語が一般的である。しょうさつ。
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉初「夕辺迄、小札(コサツ)二枚あったけれど」

こ‐ふだ【小札】

〘名〙
① 小さな札。
② 古筆切れなどの筆者について記した短冊形の小紙片。略式鑑定書として用いる。極札(きわめふだ)
歌舞伎劇場で、一幕見または子供入場券をいう。⇔大札

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デジタル大辞泉 「小札」の意味・読み・例文・類語

こ‐ふだ【小札】

小さな札。
歌舞伎劇場などで、一幕見または子供用の入場券。→大札おおふだ

こ‐ざね【小札/小実】

よろいさねの小さいもの。室町時代に作られた、従来より小形の札をいう。江戸時代以後は札の総称

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小札」の意味・わかりやすい解説

小札
こざね

甲冑(かっちゅう)を構成する主要材料。中世には札(さね)(真、実、核とも記す)と称したが、江戸時代より板物(いたもの)の札に対し小札とよぶようになった。鉄や革を短冊状に細く断ち、上辺を斜めに削(そ)ぎ13孔を2列にあけて漆を塗る。上の5孔は威し立(おどしだて)の、下の8孔は下緘(したがらみ)の孔である。小札の丈を札足(さねあし)、上部を札頭(さねがしら)という。札幅の約半分ずつをずらして重ね、革紐(かわひも)で横に緘み、甲冑の部位に応じた横長の板をつくり、漆で塗り固め、上下に威し連ねる。また19孔を3列にあけた三つ目札と称されるものがあり、初期の大鎧(おおよろい)に使用された。小札の寸法は時代の推移にしたがい、しだいに小形化した。札足は5~8センチメートルでさほど変化はないが、幅は平安後期には4~5センチメートル(1978年、京都市法住寺殿跡より幅9センチメートルの札が出土した)を普通としたが、室町末期には1センチメートルほどの細(こま)か札を生じ、札頭に漆を盛って補強することが行われた。いわゆる盛上本(もりあげほん)小札で、室町時代に盛行した。このほか金箔(きんぱく)や銀箔押しにした金小札、銀小札、朱塗りの朱(あか)小札などがある。鎌倉末期ごろに、小札を簡略化して、両側をすこしずつ重ねて縫い延べる伊予(いよ)札の考案があり、胴丸・腹巻のほか近世の当世具足に用いられ、また、室町末期より鉄や革の一枚板でつくった板札の使用が盛んになった。

[山岸素夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「小札」の意味・わかりやすい解説

小札
こざね

の胴,草摺 (くさずり) ,大袖,兜の (しころ) に用いる小板。甲冑の最も主要な構成要素。「さね」とも呼び,最も一般的なものは,革または鉄板金を素材とする縦長の小形の短冊形で,漆を塗ったものもあり,これを横,上下に組糸や革紐で連結して構成する。小札板を上下に連結することを威 (おど) しといい,種々の手法がある。小札の形状も時代によって変遷がある。

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世界大百科事典(旧版)内の小札の言及

【威】より

…古く《東大寺献物帳》には貫(ぬき),《延喜式》には懸緒(かけお)と記してある。すなわち甲冑を構成するのに,小札(こざね)を端から半ば重ね合わせて並列し,下方の緘孔(からみあな)で横綴じした小札板を一段一段上下に連ねて綴じる線を威毛といい,とくに小札板の両端を通す線を耳糸,草摺(くさずり)やの裾板(すそいた)の下方の孔を横にたすきに綴じたのを菱縫(ひしぬい)と称している。 威毛の手法を大別すると,縦取威と縄目威があり(図),縦取威は小札頭の1段目と2段目の孔の表に威毛が縦に通っているもので,古墳出土の挂甲(けいこう),正倉院伝来の挂甲残欠にみられ,上代甲冑のいちじるしい特色である。…

【挂甲】より

…小札(こざね)を綴り合わせて作った伸縮性をもつ甲(よろい)。騎兵用の武具として発達したもの。…

※「小札」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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