小品文(読み)しょうひんぶん

精選版 日本国語大辞典 「小品文」の意味・読み・例文・類語

しょうひん‐ぶん セウヒン‥【小品文】

〘名〙
中国で、明代中期以降行なわれた短い評論・随筆紀行文などの総称個性のある文体で反俗的風格を持った作品を生んだ。小品
② 折にふれてちょっとした事柄を短くまとめて書いた文章。特に、明治末期に生まれた百字文の類をいった。短文。小品。
※緑蔭茗話(1890‐91)〈内田魯庵〉「伝へ聞くデクヰンシー、ラム等は本国よりは却て米国に早く知られ其小品文(セウヒンブン)冊子となりて」

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デジタル大辞泉 「小品文」の意味・読み・例文・類語

しょうひん‐ぶん〔セウヒン‐〕【小品文】

日常生活で目に触れた事柄をスケッチふうに描写したり、折々の感想をまとめたりした、気のきいた短い文章。小品。
中国で、明代中期以降行われた短い評論随筆紀行文などの総称。
[類語]随筆エッセー随想小品小文身辺雑記漫文漫筆スケッチ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小品文」の意味・わかりやすい解説

小品文
しょうひんぶん

散文体裁の一つ。

[岡 保生

日本

1905年(明治38)ごろから10年代にかけて文壇に流行した散文の一形態。原稿紙1、2枚程度のものから、長くても十数枚の短文章で、もと新聞・雑誌の投書文芸の一種として行われ、叙情文、感想文などが主流をなしていた。『文章世界』(1906創刊)はその好例で、投書家のなかから中村武羅夫(むらお)、加藤武雄(たけお)らが出た。やがて文壇でも盛んとなり、『小品叢書(そうしょ)』(1909~10刊)や『現代小品叢書』(1913刊)などが相次いで出、水野葉舟(ようしゅう)、吉江孤雁(よしえこがん)、高浜虚子(きょし)、正宗白鳥(まさむねはくちょう)らにその作品が多い。内容的にも広義の随筆、エッセイから小説に近いコントに至るものをも包含している。また散文詩風の作品もあった。

[岡 保生]

中国

「小品」はもと仏教で「大品」と対に用いられ、同じ経典の簡略なほうのテキストを意味したが、そんな語が、古来天下国家の政治的道徳的大事にのみかかわるものと観念されていたはずの「文」と結び付いたのは、文章表現の領域を徐々に日常の小事にも及ぼしていった唐宋(とうそう)以来の文人意識の変遷と関係があり、私的な感興の個性的表出が大いにもてはやされた明(みん)末に至って、「小品文」は名実ともに成り立った。近代以降は、西欧のessay(エッセイ)やfeuilleton、また日本の俳文の伝統をも吸収し、叙情、叙事、説理にわたって飛躍的に内容を広げ、詩、小説、戯曲と並びつつそのもっとも成功した分野とさえみなされている。

[木山英雄]

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世界大百科事典(旧版)内の小品文の言及

【散文】より

…そればかりでなく,言語活動の根源に光をあてる彼の散文理論は,記号論,構造主義,マルクス主義等の思潮に大きな影響を与え,T.イーグルトン,H.ホワイト,J.クリステバなど,文芸批評から歴史理論,精神分析にいたる多様なジャンルの批評家の理論的活動の根拠となっている。【山田 登】
[中国]
 広義と狭義の2種があり,前者は韻文の対語として用い,後者は詩歌・戯曲・小説と並ぶ文学の一ジャンルであり,また小品文と呼ぶ人もある。中国の狭義の散文は歴史的には後漢の末に駢文(べんぶん)が発生してから,とくに区別する必要上用いられるようになった。…

【随筆】より

…いわゆる日記文学の中国における未成熟も同様な事情による。ただ明代末期に流行した〈小品文〉(随想類の短い文章)のなかには,まさにエッセーと呼ぶにふさわしい上質の文章が独自な文体で定着しており,中国文学史に新しいページを拓いている。この伝統と近代西欧の教養とを一つに体現した随筆家はただ周作人(しゆうさくじん)だけであった。…

※「小品文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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