射撃管制装置(読み)しゃげきかんせいそうち(英語表記)fire control system

精選版 日本国語大辞典 「射撃管制装置」の意味・読み・例文・類語

しゃげきかんせい‐そうち シャゲキクヮンセイサウチ【射撃管制装置】

〘名〙 射撃の方向角度などを照準し指示するために目標を定め、指示する装置レーダーコンピュータなどを組み合わせてつくられる。射撃統制(指揮)装置。火気管制装置。FCS。

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デジタル大辞泉 「射撃管制装置」の意味・読み・例文・類語

しゃげきかんせい‐そうち〔シヤゲキクワンセイサウチ〕【射撃管制装置】

目標に対して、射撃の方位・角度などを照準し、指示する装置。レーダー・コンピューターなどを組み合わせて作る。火器射撃統制装置。

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改訂新版 世界大百科事典 「射撃管制装置」の意味・わかりやすい解説

射撃管制装置 (しゃげきかんせいそうち)
fire control system

FCSと略称する。射撃指揮装置,射撃統制装置,火器管制装置などとも訳される。高射砲機関砲爆弾,ロケット弾,ミサイルなどの武器は,航空機,艦船などの移動する物体から発射されることが多く,また攻撃目標も航空機,艦船,車両など移動する物体の場合が多い。このような場合,現在目標がいる位置に向けて武器を発射しても,武器がその位置に到達するときには目標は動いた後なので命中しない。このため,目標の移動方向や速度と,武器を搭載している航空機などの速度および武器自身の速度,飛翔性能などから,目標と武器の位置が未来において一致する点(未来位置)を求め,発射方向を決定する必要がある。FCSは,目標の現在位置から見越角(現在の目標の位置と未来位置との差)分だけ正確に先行するように,武器の指向方向を制御する装置である。FCSは,(1)武器と攻撃目標の相対的な位置およびその時間的変化率を測定するための観測装置(センサー),(2)測定された位置および変化率から攻撃目標の航路推定し,武器に与える見越角度を算定する計算装置,(3)攻撃目標の相対位置および武器の発射角度を指示して制御のために使用する表示装置などから構成される。

野砲や艦載砲を発射する場合,従来は光学式測距儀で距離や方向を測定し,機械式や電気機械式計算機に,目標の位置,自分の位置,気象条件およびFCSに組み込まれている射表(弾丸などの武器の軌道上の位置を,時間の経過に従って算定し,射角,装薬量などの変数ごとに記した表)を索引するのに必要な諸条件を入力して射撃方向を求め,武器の方向を合わせるなど,人手によって行っていた。光学式測距儀は夜間の使用が困難であり,距離的にも限界があった。また一連の操作に人手に頼る部分が多く,高速で移動する目標に対し有効な射撃を行うことができなかった。第1次世界大戦末期ころより射撃方向の設定が動力装置で行われるようになり,計算装置としても1930年代の後半からアナログの電気機械式自動装置が使用されるようになった。また第2次世界大戦中にレーダーが実用化され,光学式測距儀にかわり使用されるようになってから,FCSは急速な発達をとげ,50年ころにはサーボ機構と併用された全自動化装置の実現を見るにいたった。60年ころからディジタル計算機が使用されるようになり,複雑なFCSの計算が高速で正確に行えるようになった結果,航空機,ミサイルなど高速で移動する目標に対しても有効な打撃を与えることが可能となった。しかしながら目標は,武器による攻撃から逃れるため,絶えず運動経路を変えるので,未来位置の推定は確率的なものとなる。そのためいかにセンサーや計算の精度を上げても,無誘導武器で命中を確保することは理論的には不可能である。

FCSの種類は,搭載される物に応じ航空機用,艦艇用,陸上車載用,固定基地用などに大別され,また制御する武器によって火砲(機関砲,大砲など)用,ミサイル用,爆撃用に分類できるが,最近では複数の武器を同一のFCSで制御するのが一般的である。また使用されるセンサーによって,レーダー方式,赤外線方式,レーザー方式,可視光TV方式などにも分けられる。とくに戦闘機用射撃管制装置の場合,機関砲,ミサイル,爆弾などが機体に固定されており,任意の方向に指向できないため,武器を命中させるには,機体自体を算定された角度方向に指向させる必要がある。このため,表示装置に現在の機首方向と,指向すべき方向の角度差が表示され,パイロットは,これがゼロになるように操縦を行う。
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百科事典マイペディア 「射撃管制装置」の意味・わかりやすい解説

射撃管制装置【しゃげきかんせいそうち】

fire control systemの訳で射撃指揮装置,射撃統制装置,火器管制装置などとも訳される。略してFCS。戦車砲,高射砲,航空機および艦船積載砲,誘導弾,ミサイル等において,目標の発見,速度・距離測定および射撃諸元の算定をすべて自動的に行い,遠隔操縦によって照準を定め目標が射程内に入れば指示により火砲を随時発射させる射撃装置。探知・追尾用レーダー,計算機,サーボ機構などからなる。
→関連項目機関銃

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