対屋(読み)たいのや

精選版 日本国語大辞典 「対屋」の意味・読み・例文・類語

たい‐の‐や【対屋】

〘名〙
寝殿造りで、正殿である寝殿左右および後ろに相対して建てた別棟建物。ふつう寝殿と渡廊で繋ぎ、寝殿に対する位置により「東の対」「西の対」「北の対」などという。たい。台。
名語記(1275)四「家の寝殿と対の屋との間などをつぼとなづく」
② 転じて、後世、別棟の離れ屋をいう。はなれ。
※車屋本謡曲・松山鏡(1539頃)「成人仕りて候程に、たいの屋を作り置きて候」

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「対屋」の解説

対屋
たいのや

中世近世の公家住宅や武家住宅で,その家に仕える女房居所などに利用された奥むきの建物。細長い建物で,中に小さな居住単位が並ぶ。寝殿造の対(たい)を誤って対屋とよぶことがある。

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世界大百科事典(旧版)内の対屋の言及

【住居】より

… 貴族の住いである寝殿造は,所有者の地位や財力によって建築の規模も棟数も大きく違ってくるが,共通して見られる特徴を要約すれば次のようになる。(a)主人の居所である寝殿,家族の居所である対屋(たいのや)や庭園観賞のための釣殿(つりどの),泉殿(いずみどの),内向の施設である蔵人所(くろうどどころ),侍所(さむらいどころ),随身所(ずいじんどころ),車宿(くるまやどり),台盤所(だいはんどころ)など,独立した建築群から成り立っている。(b)それぞれの建物は廊または渡殿(わたどの)でつながれる。…

【寝殿造】より

…完成形または典型をどのようにとらえるかは異論もあるが,現在までは次のような説が有力である。まず敷地は方一町(約120m四方)で,主屋である寝殿を中心に,東および西,場合によっては北,北西,北東などに副屋である対(たい)(対屋(たいのや))を置き,これを廊(渡殿(わたどの))で結ぶ。東西対からは南に細長い中門廊が延び,その南端には釣殿を建てる。…

【出居】より

…寝殿造の邸宅に設けられた接客の場所で,客の入口である中門廊と寝殿との中間にある二棟廊(ふたむねろう)や対の屋の一部が用いられた。ここで主人が装束をつけたり,子弟の元服などの行事を行うこともあった。《源氏物語》に〈客人の御でい,さぶらひと,しつらい騒げば〉とあるように,寝殿造では接客空間が未分化なのが特徴で,常設の客間はなかった。出居は元来〈主人が出でて客と共に居る場所〉を意味し,来客に応じて板敷の床に円座や半畳,茣蓙(ござ)などの敷物を敷いてザ(座)を設け応対する場所であった。…

※「対屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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