富山[県](読み)とやま

百科事典マイペディア 「富山[県]」の意味・わかりやすい解説

富山[県]【とやま】

中部地方北部,富山湾に面する県。県庁所在地は富山市。4247.61km2。109万3247人(2010)。〔沿革〕 かつての越中国にあたり,746年大伴家持が越中国守に任ぜられ,国府のあった伏木を中心に文化が栄えた。中世は関東武士の台頭で関東・関西勢力の接点となり,たびたび戦場となった。戦国時代には加賀から伝播した一向一揆が起こった。江戸時代は加賀前田家の支藩が支配。1871年富山県設置,数回の変遷を経て越中全域が県域になった。〔自然〕 東部立山劔岳がそびえ黒部川が深い谷を刻む飛騨山脈,南部は岐阜県に続く飛騨高地の北縁部,西部は石川県境をなす低い丘陵地である。これらの山地から南流して富山湾に注ぐ黒部川,神通(じんづう)川常願寺川庄川小矢部川の諸河川の扇状地富山平野を形成し,県人口の大部分がここに集中している。海岸は低平な沖積地。北陸地方に共通な日本海式気候で,降雪量が多く,特に東部と南部は豪雪地帯。春はフェーン現象が多い。〔産業〕 産業別人口構成は第1次4.3%,第2次34.8%,第3次60.4%(2005)。第1次産業の人口比は減少しつづけてきたが,富山平野を中心とする農業は活発であり,水田率は全国最高で裏作の少ない早場米単作地帯をなす。特産物も多彩で,砺波(となみ)市付近のチューリップカキ,低湿地のイグサ,富山市呉羽のナシ,黒部市の大型で長楕円体の黒部スイカがある。林業は不振。氷見(ひみ),新湊(現・射水市),魚津の各市を中心にイワシ,アジ,タラ,ブリなどの沿岸漁業が行われるが,湾内汚染や回遊魚の減少から沖合・遠洋漁業へと移行が進んでいる。北洋漁業出稼ぎも多い。富山市から魚津市にかけての沖合はホタルイカの群遊海面(特別天然記念物)として有名。鉱産では上新川郡黒鉛,射水郡の天然ガスをはじめ石灰石,褐炭がある。工業は県の製造品出荷額が3兆4048億円(2003)で,北陸4県では新潟県に次いで2位を占める。1968年に開港した富山新港(射水市)を中核とする伏木富山港が,1986年特定重要港湾に指定され,沿岸の富山,高岡,新湊(現・射水市)の各市には重化学工業などが発達し,臨海工業地域として発展している。このほか黒部市にはファスナー,小矢部・砺波両市などの内陸には紡績,また在来の富山売薬,城端(じょうはな)塗,銅器,捺染(なっせん)などが行われる。東部の立山連峰,黒部峡谷などは中部山岳国立公園に属する日本有数の山岳景観を展開,五箇山(世界遺産),庄川峡,能登半島国定公園に含まれる雨晴(あまはらし)海岸などとともに主要な観光資源である。〔交通〕 北陸新幹線とあいの風とやま鉄道,北陸自動車道が県の東西,高山本線と東海北陸自動車道,国道41号線が南北の幹線で,富山市を中心に富山ライトレール,富山地方鉄道各線,高岡市を中心に氷見線,城端線が通じる。富山市に富山空港があり,東京,札幌,福岡などと結ばれる。
→関連項目中部地方ます寿し

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