寄物(読み)よせもの

精選版 日本国語大辞典 「寄物」の意味・読み・例文・類語

よせ‐もの【寄物】

〘名〙
① 多種類のものを一つにまとめたもの。また、分散しているものを一か所に集めたもの。
新編追加‐天福二年(1234)三月一日「西国住人等号神人、構事於左右、好寄物功物之沙汰、致狼藉間」
③ 特に、料理で、寒天やくず粉などで、魚のすり身・卵・豆などの材料を寄せたもの。主に口取として用いられる。〔料理早指南(1801‐04)〕

より‐もの【寄物】

〘名〙
① 寄り合ったもの。引っついたもの。
随筆独寝(1724頃)上「或大夫のいひしは、より物はなれものと思ふよし、尤のことなり」
浜辺に打ち寄せられたもの。もくずの類。
浄瑠璃・鬼鹿毛無佐志鐙(1710頃)四「より物の中から刺身にする魚が出ると」

よそえ‐もの よそへ‥【寄物】

〘名〙 なぞらえる物。かこつける物。
※虎寛本狂言・萩大名(室町末‐近世初)「『イヤ、これも能(よい)よそへ物が御ざる』『何によそゆるぞ』」

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デジタル大辞泉 「寄物」の意味・読み・例文・類語

よせ‐もの【寄(せ)物】

寒天・ゼラチン果物・豆などの材料をまとめ、型に流して固めた料理。また、葛粉くずこにサツマイモ・魚のすり身などの味付けした材料を入れ、蒸し固めた料理。流し物。

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改訂新版 世界大百科事典 「寄物」の意味・わかりやすい解説

寄物 (よりもの)

浜辺に漂着する物のこと。日本の海岸には,季節のおりおり,風や潮にのって,多くの漂着物が流れ着く。とりわけしけのあった翌朝などには,種々のものが流れ着いている。こうした寄物には,流木をはじめ,破船した船の船材,ときには,人間の死体まであるし,また,ある一定の時期に海岸におしよせる魚なども含まれる。かつてのうら)の人々にとって,こうした寄物は,建築材や燃料としての貴重な生活財であった。また海のかなたから流れ寄る寄物に対し,これを神聖視することが多かった。それゆえ,これを浜に出て拾うときには,一定のしきたり作法が伴った。全国の浦々には,寄物を拾う慣行が存在し,これを寄物拾いとか浜あるきなどと呼んでいるが,これを拾うときには,必ず寄物に声をかけたり,その寸法をはかったりするまねをしてから拾うものであるとされてきた。これを怠ると必ずたたりがあると信じられた。寄物に対するこのような観念は,発展して寄神(よりがみ)信仰などになっていく。
漂着神 →寄船
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普及版 字通 「寄物」の読み・字形・画数・意味

【寄物】きぶつ

預ける、よせる。

字通「寄」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の寄物の言及

【漂着神】より

…潮流や風によって浜に流れ着く漂着物(寄物)を神としてまつる信仰で,寄神ともいう。この信仰の基盤には,寄物は海のかなたのカミからの贈物あるいはカミそのものとする考えがあり,これを拾う際に,話しかけたり,寸法をはかったりするしきたりが各地でみられた。…

※「寄物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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