家質会所(読み)かじちかいしょ

改訂新版 世界大百科事典 「家質会所」の意味・わかりやすい解説

家質会所 (かじちかいしょ)

江戸時代,幕府認可をうけて家屋敷を質物(家質)とする貸借証文の保証をおこなった所。会所が自己資金による貸付業務をおこなった場合もある。京都では1743年(寛保3)以前に家質改会所および口入(仲介者)20人ほどが奉行所の認可をうけた。貸借証文に会所奥印のない金銀訴訟は奉行所が受け付けないとし,会所は役料として元銀高1貫目(1000匁)につき1ヵ月銀2匁5分を貸方から徴収するというものであった。大坂では1767年(明和4)閏9月に家質会所3ヵ所が認可された。依頼をうけた家質について奥印保証人となる)し,銀1貫目につき1ヵ月銀2匁ずつを貸方・借方の両方から受け取り,また会所で貸付業務もおこなうものであった。同年12月,江戸町人出頭を幕府が認可したとして家質奥印差配所の設置が大坂市中に公布された。家屋敷・諸株を質物とする金銀貸借証文にはすべて差配所の奥印が必要であるとし,世話料は銀100匁につき貸方4分,借方6分,合わせて銀1匁を半年ごとの証文書換えのつど徴収するというものであった。貸借利子に世話料が加算されて負担が重くなり,とくに借金額が公示されるのは商人信用をそこなうものであったから,大坂町人の意向を無視した江戸からの命令による強制に対して激しい反対運動が展開されることになった。翌68年1月22日から3日間にわたって,差配所関係者宅50~60軒が破壊される大坂での最初の打ちこわし騒動となり,設置は一時中止となった。同年末に業務が再開されたが,75年(安永4)8月に至り,冥加金9950両を町人が肩代りすることで廃止された。

 18世紀に入ると生産者・仲買人に対する前渡金(預銀という)による仕入れ方法が一般化したため,商人の回転資金として家質が重要になったこと,幕府側も金銀訴訟の激増への対応が必要となったこと,田沼政権による冥加金政策が会所設立の背景にあったといえる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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