家彫（読み）いえぼり

精選版 日本国語大辞典

いえ‐ぼり いへ‥【家彫】

〘名〙 金工、後藤家で製作した鐔(つば)、目貫(めぬき)など小道具の総称。大名・武家の正式な拵(こしら)えには必ず用いられた。後藤家は室町時代、将軍足利義政につかえた祐乗(ゆうじょう)を祖とし、豊臣秀吉、徳川幕府にかかえられた。後藤彫。⇔町彫り。

※雑俳・柳多留‐二六（1796）「家彫の鶏にそら音の小道具屋」

出典　精選版 日本国語大辞典

デジタル大辞泉

いえ‐ぼり〔いへ‐〕【家彫（り）】

⇒後藤家彫ごとうけぼり

出典　小学館

百科事典マイペディア

家彫【いえぼり】

後藤家で作った小道具類の総称。後藤家は祖の祐乗が室町将軍家に仕えて以来，装剣金工の名家として織田，豊臣，徳川の各家に重用され，幕末まで続いた。小道具の製作を主とし，特定の題材や素材を常に用い，伝統と格式を重んじたので，将軍家や大名武家の正式の拵(こしらえ)に用いられ，江戸時代には町彫に対して家彫と呼ばれた。→後藤祐乗

出典　株式会社平凡社

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

家彫
いえぼり

装剣金工のうち，後藤派の彫った鐔 (つば) や小道具などの総称。民間の町彫に対する名称。後藤家は初代の祐乗 (ゆうじょう) 以来歴代の将軍家にかかえられて，装剣金工の制作にあたった。江戸時代以降，将軍家はじめ大名が正装する場合は，後藤派の制作に成る装飾金具で刀剣を飾るのが定例であった。

出典　ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

旺文社日本史事典 三訂版

家彫
いえぼり

江戸時代，彫金の一つ
幕府の御用彫金家，後藤一門の手になる刀装金具をいう。将軍・大名をはじめ正式の刀の拵 (こしらえ) には家彫が用いられた。民間の町彫 (まちぼり) に対していわれる。

出典　旺文社日本史事典 三訂版

世界大百科事典（旧版）内の家彫の言及

【後藤祐乗】より

…　祐乗を祖とする後藤家は装剣金工を家業として江戸時代末期までさかえ，宗家として重きをなした。足利，豊臣，徳川家などの御用をつぎつぎとつとめたところから後藤家の作品は家彫と呼ばれ，町彫とは格式を異にした。その作品は各代を通じて，品位はあるものの格式と伝統を重んじた立場上，地金や題材，彫法に制約があり，独創性，個性に欠けるきらいがある。…

※「家彫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」