家庭でみられる中毒(読み)かていでみられるちゅうどく(英語表記)Poisoning in home

六訂版 家庭医学大全科 「家庭でみられる中毒」の解説

家庭でみられる中毒
かていでみられるちゅうどく
Poisoning in home
(中毒と環境因子による病気)

 私たちの身のまわりには、5万種以上の有害な化学物質があり、中毒の機会をねらっています。日本では毎年数万件に及ぶ中毒が発生し、報告されなかった中毒を含めると年間60万件にのぼり、中毒による死亡者も年間6000人に達しています。これは交通事故による年間死亡者数の約3分の1にあたり、いかに多いかがわかります。

日本の中毒の発生状況

 図1は、2007年の1年間で日本の中毒情報センターに寄せられた一般の人々、医療機関などからの中毒時の相談電話(中毒110番)3万3932件の内訳です。家庭用品が64%を占め、医薬品が25%です。医薬品の大部分が家庭での幼・小児誤飲によるもので、発生場所では自宅が88%を占め、家庭での中毒がいかに多いかがわかります。

 一方、死亡者では、災害自殺による一酸化炭素中毒が最も多く、次いで農薬、さらに自殺目的の催眠薬(さいみんやく)、精神安定薬中毒が上位を占め、家庭用品中毒の死亡者は極めて少数です。家庭での中毒では、それほど重症にはならないことを示しています。死亡者が多いのは、やはり自殺目的での一酸化炭素、農薬、催眠薬中毒です。

中毒の年齢

 中毒110番での中毒の相談での中毒者の年齢別割合は表1のとおりです。1~5歳の小児が全体の53%と多く、0~5歳では全体の76%にものぼります。小さな子どもの家庭用品や薬の誤飲が極めて多いことから、家庭でのこれらの品物の管理がいかに重要かわかります。

家庭で起こる中毒の原因と毒性

 家庭での中毒の主な原因物質には表2のものがあります。多いものの順は図1に示してあります。乳児では化粧品や薬、幼児ではたばこ、洗剤の誤飲・誤食が多い傾向にあります。

 家庭用品といってもさまざまなものがあり、通常みられる摂取状況での毒性も、今までの経験から、おおよそわかっています(表3)。大量摂取でなければ表3の1のものは特殊な場合以外様子をみてもよいと思いますが、3、4のものは医師診察を受けたほうがよいでしょう。

主な家庭用品の中毒

 家庭用品による中毒の状態を表4にまとめました。参考にしてください。

 また、どんな場合で中毒を疑い、どのように対処したらよいかを図2にまとめました。冷静に対処しましょう。

和田 攻


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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