家内(読み)かない

精選版 日本国語大辞典 「家内」の意味・読み・例文・類語

か‐ない【家内】

〘名〙
① 家の内。また、家族、家人
※後二条師通記‐永長元年(1096)九月二六日「国家并家内大事也」
浮世草子世間胸算用(1692)四「はや正月の心、いゑいゑに庭いろりとて、釜かけて、焼火して、庭に敷ものして、その家内(カナイ)、旦那も下人もひとつに楽居して」 〔宋書‐殷琰伝〕
② 妻。自分の妻を謙遜していう場合が多い。
※狂詩・二大家風雅(1790)業寂僧都見誘看花東山酔而不能帰一睡至暁僧都有詩次韻「却疑身是遊鞍馬、目覚罷帰家内嗔」
破戒(1906)〈島崎藤村〉四「家内はまた家内で心配して」
[語誌]「家庭」という言葉が一般に用いられるようになる明治中期以前は、「家内」や「家」がその意味を担っていた。現在では「家内安全」のような熟語にまだ以前の名残がある。→「かてい(家庭)」の語誌

け‐ない【家内】

〘名〙 (「け」は「家」の呉音) 家の内。また、家の者。家族。あるいは、家族全員。一家一族。かない。
今昔(1120頃か)三「屎尿の穢を浄むる女有り。〈略〉然れば家内(けない)の人、皆、此の女を(きた)なみ蔑(あなづり)て」
※浮世草子・世間胸算用(1692)一「世の外聞もかまはず、大声あげて泣れければ、家内(ケナイ)の者ども興をさまし」

や‐うち【家内】

〘名〙
① 家のなか。〔日葡辞書(1603‐04)〕
人情本・貞操婦女八賢誌(1834‐48頃)六「手桶の水に爐の灰の、怱ちぱっと立ち上り、家裡(ヤウチ)も暗むばかりなる」
② 家の中の者。家族の者。また、親類の者。
※浮世草子・好色五人女(1686)一「家(ヤ)うちのこらず女郎はいやがれど無理に帷子(かたびら)ぬがせて」

いえ‐うち いへ‥【家内】

〘名〙 家中の者。家の者全部。
仮名草子浮世物語(1665頃)二「家うちたかり懸りて背中を打ちたり」

やんち【家内】

〘名〙 (「家内(やうち)」の意) 茨城県多賀郡で漁夫をいう。

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デジタル大辞泉 「家内」の意味・読み・例文・類語

か‐ない【家内】

家の中。屋内
家族。「家内一同」「家内安全」
妻。ふつう、他人に対して自分の妻をいうときに用いる。「家内も喜んでおります」
[類語](1インドア屋内室内/(2家族家庭ホームマイホーム所帯世帯一家我が家スイートホームファミリーお宅おいえおうち貴家/(3つま女房細君かみさんワイフかかあ山の神さいベターハーフ押し掛け女房姉さん女房世話女房恋女房思い妻糟糠の妻愛妻良妻賢妻悪妻

やぬち【家内/屋内】

《「やのうち」の音変化》いえのうち。屋内。
くしも見じ―もかじ草枕旅行く君をいはふとひて」〈・四二六三〉

や‐うち【家内】

家のなか。
「三階建の、―が広いだけ一層寂しく」〈里見弴・大道無門〉
一つ家に住んでいる人。家族の者。また、親類の者。
「―残らず女郎はいやがれど」〈浮・五人女・一〉

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