室泊(読み)むろのとまり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「室泊」の意味・わかりやすい解説

室泊
むろのとまり

兵庫県たつの市御津町室津(みつちょうむろつ)にあった古代から中世に栄えた港。五泊(ごはく)の一つ。三善(みよし)清行(きよゆき、あるいは、きよつら)の『意見封事(いけんふうじ)十二箇条』には「檉生(むろふ)泊」とある。『万葉集』3164番に「室の浦」とあり、『播磨国風土記(はりまのくにふどき)』揖保郡室原(むろふ)泊条に「室と号(なづ)くる所以(ゆえん)は、此(こ)の泊、風を防ぐこと、室の如(ごと)し。故(かれ)、因(よ)りて名と為(な)す」とあり、すでに奈良時代から良港として栄えていたことがわかる。鎌倉時代の公卿(くぎょう)源(土御門(つちみかど))通親(みちちか)の『高倉院厳嶋御幸記(いつくしまごこうき)』では、「たかさごのとまり」で一泊したあと「むろのとまり」に向かっている。

[栄原永遠男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の室泊の言及

【泊】より

…奈良時代,行基によって創設されたとされる東部瀬戸内海の五泊(河尻,大輪田,魚住,韓,室)が,船で1日行程の距離をおいて置かれていたのは著名な例である。室泊(むろのとまり)は周囲を山で囲まれた絶好の風待港であり,魚住泊は明石海峡を東西流する潮流に対する潮待港であった。五泊においても,防波堤・石椋(いしくら)の維持を理由として,勝載料と称する津料が行来の船から徴取されたが,例えば鎌倉初期,伊勢神宮がその神人(じにん)への津料賦課の免除を〈諸国往反津泊預〉に要求したように(《鎌倉遺文》843号文書),中世では各地の泊が津料を徴取していたことが知られる。…

※「室泊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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